中国依存の経済成長重視は防衛上の大失策
他方、この海域に石油が埋蔵されている可能性が明らかになると、突如として中国や台湾が尖閣諸島の領有権を主張し始めます。無人島化したために、無茶な主張が容易になったのです。
中国の圧力に対して政府の対応は一貫して弱腰で、結果的にこの海域での漁業操業すら自由にできなくなってしまいました。
中国に依存した経済成長を重視して漁業を軽んじたことは、今になれば単に漁業だけの問題ではなく防衛上の大失策であったと思います。この状況が続けば、尖閣諸島の領有を国際的に主張できなくなる日は近いかもしれません。
政府は2016年にようやく「有人国境離島法」を定めました。同法に定義される有人国境離島地域は29地域島にのぼります。これには北海道の利尻・礼文、日本海の佐渡、隠岐、対馬、太平洋の伊豆諸島や小笠原諸島、東シナ海の五島、トカラ、沖縄の八重山などが含まれます。
普段あまり意識しませんが、島国日本はほとんどの海や離島が実質的に国境となっているのです。
日中、日台、日韓、日露の間では未だに尖閣諸島や竹島、北方領土に関する争いが存在し、国境線が画定できずにいます。しかし、こうした海域でも漁業が活発に行われ、漁民が定住していれば、国土保全と国境警備には大きな役割を果たします。尖閣のように無人島化してはなりません。
政府による本腰を入れた離島漁業への対応を
漁業の存続を市場経済に委ねてしまえば、その維持は危うくなります。特に離島など僻地における漁業は採算性が低く、多くは経営が困窮しています。
漁業操業の存続はもはや単なる漁業者だけの問題ではないのです。もしそれらが消失すれば、水産食料の減少と食料自給率の低下だけでなく、領土保全が危機にすることは明らかです。
漁業は食料の争奪戦であると同時に、領土争奪戦の最前線でもあるのです。国境に近い離島や僻地の漁業は、採算性を度外視してでも政策的に守らなくてはなりません。
台湾有事も今や現実的リスクになりました。ロシアとの関係悪化で、北方領土周辺海域からも日本漁業が閉め出されつつあります。海上保安庁だけでは日本の長い海岸線は守り切れません。政府による本腰を入れた離島漁業への対応が望まれます。


