衆院選後の記者会見で「国家情報戦略」を策定すると語った高市首相。選挙前には台湾をめぐる発言で中国側の激しい反発を招いた。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院に在籍する佐々木れなさんは「日本の責任ある行動とは、むやみに有事を煽ることではない。政治的リーダーシップと覚悟を持って、中国へメッセージを伝えるべきだ」という――。

※本稿は、佐々木れな『自滅する米中』(SB新書)の一部を再編集したものです。

台湾は「中国の一部」という考え

中国の立場は、「一つの中国」原則に明文化されている。中国は一つであり、台湾は中国の一部であり、その主権は不可分であり、中華人民共和国が中国の唯一の合法的な政府であるという立場だ。

この立場から、中華人民共和国は台湾に対する主権を主張し、必要に応じて「分離」を阻止するために武力行使の権利を主張している。

北京、中国 - 2011年12月27日。紫禁城を行進する若い兵士たち
写真=iStock.com/hanhanpeggy
※写真はイメージです

さらに中国は、1971年の第2758号国連総会決議により、国連における中国の代表権がそれまでの台湾(中華民国政府)から、中国(中華人民共和国)になったことで、中国の「一つの中国」原則は幅広く国際社会から認められているものだと主張している。

中国は、単に自らの主張を国際社会で喧伝けんでんするだけではなく、自らの立場を法的に示すため、2005年、中国の全国人民代表大会において反分裂国家法を可決し、自らの台湾の地位に対する強硬な立場を正式に定めた。この法律は台湾の分離に「反対し、抑止する」と規定し、特定の条件下では「非平和的手段」の使用を認める内容を含んでいる。

武力行使を決断する3つの条件

具体的には、第8条で、北京が武力行使をしなければならない3つの発動条件を定めている。①台湾が正式に独立を宣言または中国から分離した場合、②台湾の中国からの分離につながる重大な事件が発生した場合、③平和的統一の可能性がすべて尽きた場合の3つで、いずれかを満たせば発動する。

これらの発動条件の表現は意図的に曖昧にされている。「重大な事件」や「平和的統一の可能性」といった表現は主観的であり、中国の指導者に広範な裁量権を与えている。反分裂国家法は本質的に、中国が主観的に、台湾が永久的な分離独立に進んでいると判断した場合、台湾を攻撃するための法的根拠を与えている。

中国当局はこの法律を頻繁に引用して、台湾独立派の動きを警告している。

例えば、2022年に中国の王毅おうき外交部長は、反分裂国家法に「最終的に違反された場合」、北京は躊躇ちゅうちょなく行動を起こすと警告した。