台湾有事で米軍が出動するのか?

一方、米国は対中外交において、米軍が台湾を直接防衛するかどうかについて意図的に曖昧な態度を保ってきた。この政策は「戦略的曖昧さ」(strategic ambiguity)と呼ばれている。狙いは、米国政府が台湾を有事において軍事的に支援するかどうかを明言しないことにより、中国の攻撃と台湾の独立運動の両方を抑止することだ。

しかし、近年、米国高官が、時には米国大統領も、台湾に対するより強いコミットメントをほのめかしている。

中国からは、こうしたほのめかしは、米国による台湾への武器販売と軍事協力の拡大と相まって、「一つの中国」という理解の段階的な切り崩しに等しいと受け止められている。

米中間は危険な綱渡りの状況

このように、米中の相反する法的・外交的枠組みが、危険な綱渡りの状況を生み出している。

中国は台湾の分離独立勢力に対する武力行使の主権的権利を主張する。一方、米国は台湾の将来は平和的に決定されるべきだと主張し、台湾の防衛を支援する意向をほのめかしている。こうしたコミットメントに内在する緊張と曖昧さは、米中相互の不信感を煽っている。米中双方は、相手が自国に有利なように現状を変えようとしていると相互に疑っている。

晴れた日に風に揺れる台湾とアメリカの国旗
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なお、日本の立場はどうか。

日本は「台湾は中国」と認めたか

日本は、日中国交正常化の過程で発出された1972年の日中共同声明において、「日本政府は、この(台湾が中華人民共和国の領土における不可分の一部であるとの)中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」することとなっている。

これは、米国と同じく、中国側の主張をあくまで、「理解、尊重」するものであって、中国の主張を支持、または認めたということではないということである。

したがって、「台湾が中国に属することを認めている日本は、台湾問題に介入する資格がない」という駐日中国大使館や中国外交部が発信している主張はそもそも誤りである。