※本稿は、佐々木れな『自滅する米中』(SB新書)の一部を再編集したものです。
台湾は日米同盟の死活問題
台湾の将来は、日米両国にとって死活的に重要な問題ではある。しかし、日米同盟のこれまでのアップグレードは、決して台湾有事のみを念頭に置いたものではない。日米同盟は台湾有事のためのオーダーメイドではないのだ。
したがって、台湾統一をめぐるシナリオはいずれも日米同盟に厳しい試練を突きつける可能性がある。
日米同盟には台湾統一に対応しがたい局面がある。
まず、平和的統一は、日米同盟にとっては現在の設計上、対処できない問題である。長年の中国側によるさまざまな浸透工作や政治的・経済的な働きかけにより、少なくとも外形上は台湾が自発的に中国に統一されることを選んだ場合、もはやそれを止める手段は日米にはないだろう。
また、まったくもって武力行使の根拠はないものの、中国による平和的統一を阻止すべく、国際法を無視して力ずくで米国が軍事介入するという判断もないわけではない。しかし、日本がそこに加わるというのは日本の法制度上、また国内政治上、不可能に近い。
米国は台湾有事に介入するか?
グレーゾーン活動も、最終的には平和的統一と同様に、脅しや圧力の結果、台湾が中国に統一されることを選択することになる。
さらに言えば、現状中国が東南アジア諸国、米国の同盟国であるフィリピンに対して行っている海上威圧行為に米軍が介入していないことを踏まえると、台湾が音を上げるまでの段階で、介入が行われるという希望は薄い。いずれにせよ、こうした事態は同盟の信頼性を静かに掘り崩すこととなるだろう。
封鎖や全面侵攻はまさに、日米が2015年の安保法制およびそれに伴う日米ガイドラインで準備してきた共同対処方針を発揮する場面である。このシナリオならば、現在の日米同盟で対応できそうだ。
しかし、中国が急速に軍事力を強化し、西太平洋では通常兵力の米中軍事バランスが逆転しているとも見られている現状である。そこに日米が軍事的に介入するということは、それ自体が、戦後日本が経験したことがないような耐えがたい人的・物的な被害を受けるリスクがあることを意味する。
さらに言えば、台湾有事において、現行の日米ガイドラインでは米国が主対応、日本が後方支援を含む補助的対応という構造になっている。そのため、そもそも米軍が動かなければ、日本側にできることは著しく少なくなるという問題をはらんでいる。
いずれにせよ、日米同盟がその限界を露呈することは避けられない。

