世界の警察をやめたトランプ政権
そもそも日米同盟の限界以前の根本的な問題がある。
それは米国の方針への懸念だ。米国が第二次世界大戦後、特に冷戦以来担ってきた世界の安全保障提供者としての役割を今後も担い続けるのか、という点について大きな懸念がある。要は、米国は守ってくれるのか、守る力があるのかという話だ。
現在、米国の対外政策は歴史的転換点にあるといってもよい。
トランプ大統領の基盤支持層であるMAGA(マガ)派と呼ばれるグループがある。MAGAとは、トランプの有名なスローガンMake America Great Again「米国を再び偉大に」の略である。
MAGA派は、これまでの伝統的なエリート(エスタブリッシュメント)が主導してきた外国への軍事介入、特に中東で20年以上に及んだ米軍の介入に強い嫌悪感を示している。彼らには、基本的に米軍を他国に、また他国のために派遣するべきではないという「抑制主義」とも呼ばれる強い信念がある。
また、トランプ大統領の後継者の筆頭といわれるバンス副大統領も、MAGA派のなかで抑制主義を強硬に主張している。2025年6月下旬の対イラン作戦では「米国はイランそのものではなく核計画と戦っている」と強調し、攻撃の範囲と目的を限定するべきだとの立場を示した。
また、トランプ大統領自身も、2025年5月のリヤドでの演説において、過去の米国の中東における軍事介入を批判し、特に他国の体制や価値観に口を挟むべきではないと発言した。
これは、もはや米国が世界の警察官をやめると言っているのに等しいだろう。
トランプが排除した対中強硬派
さらに、トランプ政権のなかでは、対中強硬派や海外軍事介入積極主義者が次々に排除されるか影響力を失いつつある。
対中強硬派の筆頭派であったマイク・ウォルツ現米国国連大使は、当初米国の安全保障政策サークルで最も重要な大統領安全保障担当補佐官だったが、同じく対中強硬派の副補佐官アレックス・ウォンとともに、早々に解任された。また、ロシア・ウクライナ和平担当大統領特使であり、対露強硬派で海外軍事介入にも積極的なキース・ケロッグ将軍は、解任こそされていないものの、表舞台で見かけることはなくなってしまった。
こうした動きは、台湾であろうとなかろうと、トランプ政権がますます、海外に米軍を派遣し、軍事介入することのハードルを高めていることを示唆している。
また、前提として、米国がこれまで築いてきた国際秩序は、米国が主導して構築した国際経済・金融システムから各国が利益を享受することによって支えられてきた。国際秩序はただ米国の圧倒的な軍事力があったから成立したものではなく、米国主導の秩序が経済・金融面でも得になるからこそ世界で支持されてきた。

