逆転の“カウンターパンチ”として「ほめ」を入れる

本書ですでに触れたように、質問をし、まだ誰にも言っていないことや、こちらが聞きたかったこと以上の発言といった、ヴァリューのある答えを相手から引き出すというのが、質問力を鍛えた先にあるゴールである。

そのためには、相手が気持ちよく感じる環境、ノリノリになってくれる心持ちにしなければならない。それを実現するための、一番手っ取り早いやり方が「ほめる」である。

言ってしまえば「ほめ」も一種のアイスブレイクだ。“先制パンチ”として雑談や面談の初期段階、あるいは沈滞ムードのときの逆転の“カウンターパンチ”として「ほめ」を入れれば、場の形勢は一気に自分のほうに傾くだろう。

ナチュラルにほめられて気分を害する人は、よっぽどひねくれている人以外、まずいないだろうからだ。

ただし、ジョーク同様、TPOをわきまえなければ、逆に空気を悪化させてしまう危険性もはらんでいる。

「あなたの考え方はとても面白いですね。一体、どういうきっかけでそのようなアイデアを思いついたのでしょうか?」
「トランプ政権の関税政策がおかしいと思ってね。それで関税の歴史を調べているうちに気づいたんだよ」
「へぇ、素晴らしい。物価が高くなるので早く関税をもとに戻してほしいですね。ところで、ウクライナ情勢について……」

こんな感じでは逆効果だ。つながりがないため、気持ちが入っているように感じられない。普通の会話でつながりが悪くても、せいぜい「ちょっと強引な展開だな……」と思わせるぐらいだ。ところが、ほめ言葉前後のつながりが悪いと、相手に一発で見透かされてしまう。

「コイツ、ゴマすっているだけやな」と。

会議をしているビジネスマン
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根拠をきちんと示すと非常に高い効果に

私なら、たとえば最後の言葉を以下のような感じにする。

「へぇ、素晴らしいですね。将来、ノーベル賞候補になるかもしれませんよ。なぜなら、私が懇意にしているポール・クルーグマンも、そこに気づいていませんでしたから。では、その流れで言うと、米中関係は今後……」

ただ単に「ノーベル賞クラスですね」であればゴマすりにすぎない。しかし、たとえば私の場合、クルーグマンと付き合いがあり、彼の考えを知っているから、ある程度、自分の知識で相手とクルーグマンを引き寄せることができる。

そのように、根拠をきちんと示すだけで、相手は本当に自分のことをほめてくれていると感じ、気分も上がっていくのだ。

もちろん、これは、別にクルーグマンと知り合いでなければ言えないような話ではない。彼の本や記事、メルマガを読んでいるだけでも、そのくらいのことは言えるだろう。

要は、「自分のほめは正当な評価である」ということが、相手に伝わればいいのだ。とくに先述したように、空気が悪くなったときの的確な「ほめ」は非常に高い効果を発揮する。まさに流れを一気に変える“game changer”の役割を果たしてくれるのだ。