長く存続する歯科医院や医院は何が違うか。歯科医師で経営コンサルタントの多保学さんは「親の医院継承を無条件に引き受けると失敗する。継承する子が自分の人生として、本当にその場所で続けて経営が成り立つのか、しっかり分析しないと3~4年後に移転を余儀なくされる」という――。

※本稿は、多保学『脱・院長の教科書』(クインテッセンス出版)の一部を再編集したものです。

近代的な医療クリニック
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親の医院を継承して一生後悔する先生達

医師や歯科医師が親の医院を継承することは、医療業界では当たり前のように行われています。しかし、実はそこに大きな落とし穴があります。

医院継承で多く見られるのは、親の医院の患者数が減ってきたから、あるいは親が高齢になったから「帰ってきてくれ」と言われるケースです。

しかし、そう言われたからといって安易に引き受けず、一度よく考えてみるべきです。どちらも本来は親の問題なのに、それを子に転換しているだけなのですから。

親孝行は大切ですが、自分の人生の主人公は親ではありません。自分の意志で、自分の道を選択するべきです。

親の事業を継承することは、たしかに大事なことです。とくに代々歯科医院を家族で経営している場合はなおさらです。しかし、自分の人生は自分のものです。どこで何をしたいか、やはり自分を主軸に置いて考えるべきだと思います。

一般の中小企業であれば、事業継承の際には必ず引き継ぎの期間を設けます。入ったばかりの後継者を急に社長に据えることは、まともな企業ではあり得ません。ところが医療の世界では、こうした無謀な継承がまかり通っているのが現実です。

本来であれば、親子でしっかりと話し合い、どれくらいの引き継ぎ期間が必要なのか、医院の方向性をどうしたいのかを議論すべきです。

例えば、「家族のために頑張ってやっている」という親と、「この地域の人達に求められる医療をやりたい」と考える子が、そのまま一緒にやってもうまくいくはずがありません。