患者はいてもスタッフが確保出来ない

私がもっとも問題だと感じるのは、親と建設的な会話が出来ない関係のまま継承するケースです。親が経営について何も話してくれない場合、帰っても喧嘩になるだけです。なかには、親がさらに私腹を肥やすために子を帰らせるような例もあります。

また、継承後も親が経営に口を出し続ける場合も少なくありません。ひどい場合には、若い院長に経営権が一切なく、まるで従業員のような扱いを受けているケースもあります。これでは、自分のやりたい医療が出来るはずがありません。

さらに深刻なのは立地の問題です。親の時代には良かった場所でも、人口動態の変化により、これからの時代には適さない可能性があります。人口減少が進む地域では、患者はいてもスタッフが確保出来ないという問題も深刻化しています。

街並み
写真=iStock.com/Irina Brester
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現時点でその状況であれば、10年後、20年後はさらに厳しくなるでしょう。一度継承して医療設備や内装などに多額の投資をしてしまうと、そこから動けなくなってしまいます。

本来であれば、継承する子が自分の人生として、本当にその場所で続けて経営が成り立つのか、しっかり分析をすべきです。しかし、そういったことは皆無のケースがほとんどです。

家族だからといって無条件に継がせない

結果として、多くの医師や歯科医師が3~4年後に移転を余儀なくされます。最初から十分検討していれば、貴重な自分の時間や費用を無駄にせずに済んだかもしれません。

医院の継承を成功させるには、経営の方向性について親子でしっかりと議論し、理解し合ったうえで行うべきです。

私の場合、浦和にある父の歯科医院の立地と機材の古さ、そして父と自分の診療スタイルの違いを考慮し、同じ名前のクリニックを別の場所に開設するという戦略をとりました。継承といっても様々なやり方があるのです。

将来、私が次の世代に継承する際は、家族だからといって無条件に継がせるつもりはありません。

これだけの大きな組織をハンドリングするには、それ相応の経営能力と人間性が求められるからです。適性のある人間が継ぐべきであり、その場合でも必ず十分な引き継ぎ期間を設けるつもりです。