議員会館から退去する元立憲議員たち
「真冬の悪夢」は高市早苗首相の電撃解散で、急きょ結成した新党・中道改革連合にまともに覆いかぶさった。
「まるで見えない敵と戦っているようだった」
「悪い夢を見ているような気持ちで現実感が持てない」
壊滅的な敗北で、多くの仲間とともに落選した立憲民主党出身の中道の前議員は、議員会館の自室を退去するための荷造り用の段ボール箱の山を見ながらそうつぶやいた。投票日から4日で荷物を出して明け渡さなければならない。その作業を黙々とこなすのも議員とともに突然失業した秘書たちだ。
過去落選経験もあるその前議員だが、今度の選挙は、いままでのどの選挙とも違った奇妙な空気のなかで戦っていたと振り返った。
選挙が始まって最初はドタバタだったが、公明党の支持者も加わり、次第に動きは良くなった。中道の劣勢が一斉に報道された中盤以降も、むしろ反応が良くなっていた程だったという。ただ何度も選挙を戦ってきた秘書は、「人の集まりはいいけど、足を止めて演説を聞く人の数はそれほど多くはありませんでした。身内だけが盛り上がって、無党派層には届いていないのではとずっと不安でした」と選挙戦を振り返った。
「高市さんに追い風が吹いているのは確かだが、その影響が全く読めない」
自民党陣営も含めて、選挙中そんな声を各地で聞いた。つかみどころのない、だが、確実に強烈な圧力を持つ奇妙な空気が日本列島全体を覆っていたのである。
熱狂なき高市ブーム
SNSの影響は圧倒的だった。選挙に関する短い切り抜き動画が拡散し、再生回数は驚異的な数を記録した。自民党広報が制作した広告の再生回数は1億回を超えた。匿名投稿者が首相や自民党を応援する内容の投稿も、数万から数十万単位で再生回数を増やし続けた。
高市首相の街頭演説には、凄まじい数の聴衆が集まった。自民党は組織力で数千人規模の動員をかけたが、さらにその何倍もの群衆が集まったという。
筆者も現場を見に行ったが、手荷物検査に長蛇の列ができ身動きもできないような聴衆なかに、子供を連れた夫婦や学生風の若い男女など、普段の自民党の街頭演説会ではあまり見かけない人達が目立ったことにも驚いた。
「日本を強く豊かに」「日本を守り抜く」
高市首相の演説は、いつも通り、勢いとノリはいいが、内容は抽象的、網羅的で、遠くからでは何を言っているか良く分からない。聴衆の中には日の丸の小旗を振りながら「サナエちゃーん」と叫ぶ人もいるが、大半は静かに演説を聞きながら、みなスマホを高く掲げている。

