熱狂と言うより、自分の好きなアイドルを見に来ているような雰囲気だ。回りの人たちの間では「高市さん頑張っているよね」「元気そうで良かった」といった会話が交わされていた。一方で、選挙演説会では定番の「ガンバロー三唱」には、ほとんどの人が参加していない。従来の選挙応援とは一味違う、これが「推し活」というものか……。
ポジティブな「高市推し」
もちろん、そこに参加している聴衆は高市ファンであり自民党を支持する人々だが、そこで撮影されたショート動画がSNSで拡散され、自己増殖するようにけた違いに再生されていく。それを見た人が、高市首相の遊説先を調べ自らも足を運ぶ。アイドルの推し活のように、選挙区を超えて遊説場所にかけつけ、その模様を動画でアップしていくという人も増えていった。
「明るくやさしいポピュリズム」とでも言うのだろうか。ネット上でも、高市さんの演説で元気が出ました。自民党で明るい日本をつくってほしい、などとポジティブな投稿が溢れている。具体的な政策に関することや野党の批判などもないわけではないが、目立つのはあくまでポジティブな「高市推し」のものばかりだ。
だが、もちろんやさしく明るいだけではない。苛烈で陰湿な側面もあった。虚実ないまぜになった誹謗中傷や偽情報も、凄まじい勢いで「サナエの敵」に襲い掛かった。
猛威を振るった「リベラル狩り」
標的になったのは中道の幹部や大物政治家だ。
選挙の陣頭指揮をとった中道の安住淳幹事長は、遊説中に足を組んでクリームパンを食べたことやポケットに手を突っ込んだまま演説をしたことが「傲慢だ」と非難する投稿がネット上にあふれた。東日本大震災で被災者に冷たい言葉を投げかけたという事実と異なる情報も瞬く間に拡散された。
終盤戦、選挙区に張り付かざるをえなくなるほどだったが、選挙区以外からも対立候補の女性を「辻立ちクイーン」と応援する書き込みが集中的にネット上にあふれ、その候補に4万5000票もの大差をつけられ落選した。
また旧民主党時代から要職を歴任してきた岡田克也氏もネットの攻撃に苦しめられた。台湾有事が日本の存立危機事態になり得るという高市首相の答弁を引き出したことに対し、日中関係が悪化したのは岡田氏の質問が原因だ、岡田氏は中国のスパイだといった批判がネット上にあふれた。
立憲ベテランから、自民“リベラル派”まで…
岡田氏はネット上で事実関係を説明し、不当な非難に反論し続けたが、立憲の議員のもとにまで、「中国の手先のような岡田氏がいる党はもう応援できない」という支持者からの電話やメールが相次ぐようになっていた。
連続当選14回でテッパンとも言われた岡田氏は、落選が決まった後、いつもの淡々とした表情で説明した。
「敗因は二つ。一つは高市旋風で、これまで私を支持してくれた自民党支持層、無党派層が、今回は自民党に行ってしまった。もう一つはネットですね。ネット上で間違った情報や批判が広がり、それにうまく対処できなかった」
いつも通りの冷静で客観的な分析だ。恐らく、岡田氏の言う通りの状況が各地の中道候補に襲い掛かってのだろう。

