「焼け野原になっちまった」

穏健な保守、つまり保守リベラルと、左派リベラルを統合する効果を狙って立ち上げた新党「中道」だが、高市旋風の前に、壊滅的な敗北を喫した。野党陣営のリベラル勢力は雲散霧消してしまったかのようだ。

特に145人の所属議員が21人にまで減少した旧立憲のグループでは、このまま中道で戦うことができるのか懐疑的な声が強まっている。

「焼け野原になっちまった。立憲と公明の双方に不信感が強く、参院でまとまることさえ難しい。ここから立て直すのは容易ではない」

落選した大物議員の一人は、そう心情を吐露した。中道の新代表に知名度の高い小川淳也氏を選出したが、野党陣営でリベラル勢力を立て直すのには時間がかかるだろう。

高市内閣の暴走を止める勢力はなくなった。国民民主党の玉木雄一郎代表は、選挙前「自民が300議席もとると時速200キロで暴走しかねない」と言ったが、その状況が現実になった。「対決より解決」といっても国民だけでは自民に政策を飲ませることなど到底できない。日本維新の会も同様だ。アクセル役だと訴えてきたがもはやアクセルは不要だ。

そうなると、自民党のブレーキ役は、自民党内の石破氏ら「リベラル派」しかいなくなる。リベラルの灯は、焼け野原の野党陣営ではなく、自民党の中にともり続けることになったのである。それが獅子身中の虫として、高市氏を悩ますほどの存在になっていくのか、それはまだこれからの話だ。

次の火種は巨大与党の中に

「政治の世界は時計の振り子だ」

かつての宏池会の重鎮・前尾繁三郎が語った言葉だ。自民党は、右から左に振り子を振るように政権を替えて生き延びてきた。この振り子がどう振れるのか。

中曽根康弘首相の「死んだふり解散」(1986年)で自民党は300議席を獲得した。ところが3年後の参議院選挙では、リクルート事件や消費税導入の影響で、歴史的な大敗を喫し、「ねじれ国会」が生じた。これが93年の政権交代につながった。

また2005年には小泉純一郎首相の「郵政解散」で自民党は296議席の圧勝を飾った。しかし、この後も2年後の参院選で歴史的惨敗を喫し、さらに2年後、民主党に大敗して政権交代したのである。

その後、安倍・菅政権と、右に振れ続けていた振り子は、リベラル色の強い岸田政権、石破政権と今度は左に振れていた。それがまた右に振れたのが高市政権だったが、この強硬右派が主導する政権は、かなり強引な解散総選挙で、振り子をブン、とさらに右に振り切った。それが歴史上最大の316議席という結果を生んだのである。しかし、振り子をあまり強烈に振りすぎると、その反動が大きいというのも歴史の教訓だ。

かつてない巨大な数の力を手にした強硬右派が主導する高市政権と、与野党を通じたリベラル派の最後の拠点となった石破氏を中心とするグループ。その行動が、今後の自民党の行方を左右するのかもしれない。

国会議事堂
写真=iStock.com/kanzilyou
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