生命保険会社の営業とは、どのような仕事なのか。半沢直助著『かんぽ生命びくびく日記』(三五館シンシャ)より、生命保険会社の社員が課せられた厳しいノルマの実態を紹介する――。
トラブルとビジネスマン
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メンタル不調から復帰した社員への“叱咤激励”

休職していた上原さんが復職することになった。

私より1年前に入社した上原さんはもともとIT企業にシステムエンジニアとして勤めていて、営業職は未経験だったらしい。金融の知識もなく、かんぽ生命の営業に苦労し、1年近く契約を1件も取ることができなかった。そのプレッシャーもあったのか、メンタルに不調をきたし、休職。しかし、奥さんと3人の子どもを抱えていて休んでいるわけにもいかず、職場復帰を果たすことになった。

「上原です。心機一転、新たな気持ちでがんばりますので、みなさんよろしくお願いします」

まだ30代半ばだが、苦労のためか頭髪はかなり薄く、自信なさそうな表情とも相まって頼りなく見える。研修所時代に同部屋だった大林さん(※1)の姿がオーバーラップした。

「半沢です。私もまだ新人なんでよろしくお願いします。上原さんも体調に無理のない範囲でぼちぼちやっていきましょう」

プレッシャーをかけないように私がそんなふうにあいさつすると、

「長いこと休んでしまって、勘が戻らないけど、やるしかないっすからね」と言う。彼自身も復帰に向けて期するものがあるようだった。

だが、結果至上主義のタッコー(編集部注 部長の白石達光。名前の「たつみつ」を音読みして呼ばれている)にとっては病み上がりかどうかなど関係ない。

「上原クン、とにかくかんぽの挙績だわ。かんぽ、かんぽ、かんぽだで。契約が取れんもんにゃ居場所はないでね。歯を食いしばってでもがんがん成績をあげるんが重要だわ」

復帰早々こんなふうに圧をかけていいものだろうか。他人事ながら上原さんのメンタルが心配になる。

※1 同部屋だった大林さん
国立の研修以降、結局、大林さんとは一度も連絡を取ることはなかった。根拠はないけれど、大林さんはもう郵便局にはいない気がする。