毎朝繰り返される営業成績発表

毎日の朝礼時、前日の挙績を発表するのは吉井代理の役割だ。

「では、まずはかんぽです。広瀬さん、1万5497円!」

前日に契約を取ってきた営業マンの名前と金額が読み上げられ、一同から拍手が起こる。私も元気よく拍手。

「続きまして富岡さん、久々の挙績ありがとうございます。2万7110円」

再び、一同が拍手。

「そして、昨日のヒーローはなんと言っても寺尾さん。8万7051円です。素晴らしい。ありがとうございます!」

タッコーは全体を見渡し、しっかり拍手をしていない社員がいれば、怒声を飛ばす。拍手ひとつとっても手抜きは許されないのだ。

「え〜、昨日はこの3件でしたが、みなさんのおかげで全体としてはラップを上回っています。この調子で昨日挙績のなかった方もがんばっていきましょう!」

この日の生贄に投げられる容赦ない一言

吉井代理の報告が終わると、それを待っていたようにタッコーの怒鳴り声が響く。

「上原ぁ、今月末までに挙績あがらんかったら、おまえ、ホントにクビだでぇ(※5)

上原さんは伏し目がちに立ち尽くしている。この日は上原さんが生贄いけにえにされたが、挙績をあげられていないメンバーにとってはいたたまれない場となる。

吉井代理との慣らし運転を経て、独り立ちして営業をスタートした上原さんだったが、相変わらず成績はあがらなかった。電話がけは精力的にこなし、「制度改正」を使ったアポ取りもうまい。だから、訪問まではたどり着く。しかし、契約にまで至らない。上原さんには訪問したあとの「プラン」がないのだ。

怒っている先輩ビジネスマン
写真=iStock.com/pain au chocolat
※写真はイメージです

※5 クビだでぇ
この当時は「クビだ」「バカヤロー」「タワケが」といった暴言が平気で飛び交っていた。このころからまだ10年も経過していないが、今こんなことを言えば、間違いなくハラスメント認定だろう。組織風土が良い方向に変わっていることを願っている。