中国にとって台湾は絶対に譲れない国内問題

外交は、情報にしろ、交渉にしろ、言葉が命である。インターネットが普及し、情報の発信が容易になった今日、ネット空間は外交の重要な現場となった。そこで圧倒的な存在感を見せるのがトランプ米大統領であるが、中国の外交官も攻撃的なスタイルで耳目を驚かす。昨年11月、大阪駐在中国総領事が台湾有事をめぐる高市早苗総理の国会答弁を捉えて「X(旧ツイッター)」に投稿した内容が批判を浴びた。

「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」

この投稿文は、その言葉遣いにおいて著しく不適切で不謹慎である。日本政府が中国政府に対し外交的抗議を行ったのは当然である。一国の指導者への敬意を欠くのみならず、常駐使節の長としての接受国(外交使節を受け入れる側の国)に対する国際儀礼にも反する。日本国内からは、同総領事に対する「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」※1を要求する声※2も出た。

※1:「外交関係に関するウィーン条約」と「領事関係に関するウィーン条約」に規定があり、接受国は理由を明らかにせずにその通告をすることができる。対象となりうるのは、敵対的言動、犯罪行為、スパイ行為などの好ましくない行動をした、あるいはする恐れのある人物であり、通告対象者は国外退去となる。
※2:日本がこの通告をすれば、相手国政府も「相互主義(reciprocity)」の原則に従って同様の措置を取る可能性がある。第1期トランプ政権下で起きた米中総領事館(ヒューストンと成都)の相互閉鎖は「相互主義」の例である。

この過激な投稿については、中国総領事個人の問題として捉えるのではなく、中国の強硬姿勢全体の駒の一つとして位置づけたうえで、中国外交の特徴や狙いを読み解くことが日中関係をマネージしていくうえで重要である。

中国外交は2012年に習近平総書記が最高指導者になって以降、大きく変わった。台湾統一を含む「中華民族の偉大な復興」の夢を実現すべく、「強国強軍」路線を掲げ、力による一方的な現状変更の動きが顕著となった。国際的な懸念が高まる中、中国の外交官は強硬なナラティブで反論する「戦狼外交」を展開。その手段の一つが中国社会で禁止されている海外のSNS(例えば「X」)である。

中国総領事の「首切り発言」から中国軍機による自衛隊機への火器管制レーダーの「ロックオン」や台湾封鎖を想定した軍事演習まで、その「戦狼」スタイルは中国の国際的イメージを著しく損ねているように見える。それでも、彼らがそのスタイルを改めようとしないのは、「核心的利益」に縛られているからである。

09年、筆者は『日本走向何方(日本はどこに向かうのか)』と題する書を中国で出版し、その中で「開かれた国益」を提唱して、戦略的互恵関係の構築を促した。中国各紙が好意的な書評を載せたが、中国政府は譲歩の許されない「核心的利益」という概念を打ち出し、政治体制、主権、領土、発展などがそれに該当すると主張した。

中でも台湾問題は中国の主権や領土に関わり、歴史や安全保障とも絡む「核心的利益」の核心とされる。習総書記は「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の変わらぬ歴史的任務だ」と強調し、台湾独立や外部勢力の干渉は断固粉砕すると明言する。

愛国教育で埋め込まれた日本=侵略者という認識

中国は台湾に対する武力行使の可能性を排除しない方針を堅持している。中国が台湾に対する軍事的威圧を強める中、21年4月の日米首脳共同声明は半世紀ぶりに台湾に言及した外交文書となり、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。武力統一の可能性を排除しない中国の「核心的利益」と台湾海峡の平和と安定という日米の「死活的利益」が交錯し、米中および日中の関係を揺るがせてきた。

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