大阪のホテルは50%以上キャンセル
2025年11月7日、高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態(※1)になり得る」と答弁をおこなって以来、日中関係は一気に冷え込んでいる。
中国政府は11月14日ごろから、政権を挙げての対日報復措置を無数に実行。そのなかでも象徴的なのが、中国国民の日本観光に対する直接的な抑制である。中国からの訪日団体旅行は凍結され、政権の意向を忖度した中国系航空会社は日本便を削減。中国からのクルーズ船の寄港も回避された。個人旅行に対する明確な禁止はなされていないが、自粛ムードのなかで中国外交部などが日本の治安悪化や地震リスクを強調する宣伝をおこないつづけている。
実際、現在の日本では、その余波が如実に表れている。観光庁や民間企業による統計でも、25年11月の中国人訪日客数は、前月比では15万人以上が減少。実に21.4%の落ち込みである。伸び率も、同年1月は前年同月比135.6%増だったのが、11月は3%増と急速に勢いを失っている。
もともと、10月の国慶節連休後と比べて11月の中国人訪日客が減るのは例年のことながら、24年は前月比6%減にとどまっており、25年の下落幅は明らかに大きい。
事実、インバウンド客が多い浅草寺付近で取材した神戸牛レストランの店長は、「来客の国籍をすべて記録しているが、中国本土からの客は高市発言以降、6割減った」と話す。錦糸町の某ビジネスホテルでも、かつては客の8割が中国人だったが、現在は半減したという。
大阪で中国人向けの「包車(貸切車両)」サービスを提供する中国人は「客がほとんどゼロになった業者もいる」と嘆く。関西国際空港の免税化粧品売り場に勤務する中国人スタッフの一人も「ツアー客がいないので免税品がまったく売れない。個人旅行者も少なく、以前は代理購入の客が多かったが、今はほとんどいない」と肩を落とす。
裏付ける数字も出ている。国内の各報道によれば、髙島屋では12月上旬の免税売上高が前年同期比で約10%減、中国人客だけで見れば実に24%減だ。三越伊勢丹でも20%減、大丸松坂屋でも9%減。そごう・西武は中国向け広告を中止し、東南アジアや欧米市場に軸足を移しつつある。
宿泊業も地域によってはダメージが大きい。観光庁の統計では、25年1〜9月の宿泊客に占める中国人の割合は、富士山のある静岡県で45%、仏教建築などが中国人に人気が高い関西各県で30%台とかなり高めだったが、これらの高依存地域ではキャンセルの影響が顕著。大阪府内のホテル20社で、年内予約の50〜70%が取り消されたとの報道もある。
もっとも、東南アジアや台湾からのインバウンドは減っておらず、中国の中央政府の影響が強い香港からの旅行者も活況だ。現場で取材をする限り「もともとオーバーツーリズム気味だったので、大きな影響はない」といった声も決して小さくない。事実、全体として見た場合の訪日外国人客数は減っていないどころか、11月は351万8000人で前年同月比10.4%増。11月としては過去最高を記録している。
中国人観光客の消滅がもたらすダメージの大きさは、地域や業態、また中国人自身が同胞向けに運営する配車サービスや民泊など、インバウンド業界のなかでも中国人観光客への依存度の高さによって大きく左右されている印象だ。
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