昔は、家長であるだけで1番上席に座ったものですが、家族サービスをしないで仕事だけに邁進したせいで、すでに家に居場所のない人もたくさんいます。今や家庭で承認されるにもお金以外の努力が必要なのです。要するに、「会社での承認」と「家庭の承認」はもはやセットではなくなったということです。

では、どうすれば新たな幸福の物語を生み出せるのか。そのためには、会社以外で自分を評価してくれ、大切にしてくれる誰かからの承認を得ることが不可欠になってきます。そのためには「他人とのつながりをつくり出す努力」をしているかどうかがカギになるのです。

会社の外といっても、お金を払ったサービスとして大切にされる場、例えばクラブやスナックなどではありません。本当の意味で対等な「人間関係」をつくることにお金を使うべき時代なのです。

「プレジデント」の読者世代はバブルを知っている人も多いでしょう。家や車、そしてブランド品を買うことで「幸福」の物語を紡いでいった世代です。これは、いわば、「商品そのものにお金を費やしていたというよりも、その商品を買うことによって、それがもたらすであろう幸福を買っていた」のです。

そもそも、モノを買うことで得られる幸福のシステムは国全体の経済成長を前提としたものです。しかし、日本は今、ゼロ成長時代に突入しつつあります。国のGDPが多少は増えることはあっても、1990年代半ば以降、家計の可処分所得という個人レベルでは、ここ15年間は実質ゼロ成長の時代だったのです。さらに2008年のリーマンショックは、これから家計所得が減ることはあっても増えることはない、と人々に実感させました。そこで新しい幸福の在り方のモデルが求められるようになったのです。

現在は「モノ」でなく、人間関係、すなわち「つながり」をつくるための消費をするべき時代です。30代以下のロスジェネ世代に比べれば、今の40代以上の多くはまだ金銭的に余裕があるはず。今後は、それを人間関係をつくるためのネットワーク、サービス、ボランティア活動などに投資するのです。