宗教学者・文筆家 島田裕巳氏

現代日本は「無縁社会」であるという。とりわけ東京などの都会では、地縁、血縁、社縁(職場縁)といった人間どうしの絆が希薄化し、多くの人が平生誰とも関わり合わずに生きている。そのため、誰にも看取られずに孤独な死を迎える人も少なくない。それは実に悲しいことではないかというのが、2010年1月にNHKが放送し、大きな反響を呼んだテレビ番組『無縁社会-無縁死3万2千人の衝撃』の趣旨だった。

孤独死の恐れがあるのは、未婚のまま1人暮らしを続けている「おひとりさま」だけとは限らない。最近の都会人は子供や配偶者に恵まれたとしても、子が独立し配偶者に先立たれれば、話し相手もないままたった1人の晩年を過ごすことになりかねない。独居者が自室で亡くなり、そのまま何日も気づかれなかったという話はいまや珍しいものではなくなった。番組はそうした風潮を悲しげなトーンで報告し、大方の共感を得たのである。