宗教学者・文筆家 島田裕巳氏

2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに、無縁という言葉の持つイメージも急変した。この日、三陸海岸や仙台湾沿いを有史以来の大津波が襲い、街を根こそぎに壊し、万を数える犠牲者を流し去った。

親戚縁者の全員が津波に呑まれ、1人だけ生き残った人もいるだろう。その人こそ本当の無縁である。

これに対し『無縁社会』が提起したのは、桁違いにささやかな「無縁」である。たとえば、都会で長く1人暮らしを続けたため遠くに住む肉親と没交渉になってしまったとか、リストラや定年によって職場との縁が切れ、それきり誰とも接触せずに暮らすようになったというケースである。