戦闘機パイロットは普段、どんな訓練をしているのか。元航空自衛隊隊員の前川宗さんは「どんなに過酷な状況でも冷静な判断力と責任力が求められる。戦闘機の特質としてハイスピード、ハイGが挙げられる。特にハイGは直接体に受ける負荷がとても大きいため、筋力や呼吸法で意識を保つ方法を習得している」という――。

※本稿は、前川宗『元イーグルドライバーが語る F-15戦闘機 操縦席のリアル』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

宇宙ロケットに近いが、宇宙空間は飛べない

戦闘機が飛ぶ高度は、一般的な旅客機と大きく違うのかといえば、じつはそんなことはありません。

性能からすれば、戦闘機の最高高度は約5万フィート(約15キロメートル)になります。一方、旅客機の場合は4万フィート程度。エンジンの性能ギリギリまで攻めれば、それ以上の高度を飛ぶことが可能です。ただし、それはあくまで性能の話であって、ふだん飛んでいる空間やエリアは基本的には一緒です。

飛行機が飛ぶエリアは「対流圏」と呼ばれる、地上から高度16キロまでのエリアです。その上の成層圏は、宇宙空間用の装具を備えた飛行機でなければ飛ぶことができません。戦闘機は、宇宙ロケットにもっとも近い存在ですが、宇宙空間を飛ぶことはできないのです。対流圏のいちばん上のあたりまで、旅客機はそのもう少し下までです。

旅客機
写真=iStock.com/Egorych
※写真はイメージです

地球が丸く見える「高高度」の世界

私自身、5万フィートの高度まで飛んだことが何度かあります。そこで見える景色は明らかに違います。上を見ると空の色は濃いブルー。高度が上がれば上がるほど濃くなります。映画などで見る宇宙空間のような深いブルーです。

下を見ると、視界が良好であれば、地平線・水平線がはっきり見渡せます。大きくえがいており、地球が丸いことが実感できます。

高度が上がると、飛行機の飛び方も変わってきます。まず、急旋回が困難になります。戦闘機は機体を傾けて翼に空気抵抗を受けることで旋回しますが、高高度では空気が薄いので空気抵抗が弱まり、旋回能力が落ちてしまいます。自動車でいえば、タイヤの摩擦力が弱く、思うように曲がれない状態です。

急旋回がしにくくなる一方、空気が薄いことで抵抗が小さくなるため、速度が出やすくなります。その半面、エンジンへの酸素の供給も減るのでパワーが落ち、減速もしやすくなります。つまり、性能も扱い方も高度によってまったく異なるということです。