3万フィートから繊細な操作が必要に

ふだんの訓練などで飛んでいる高度は、だいたい1万~5万フィートのあいだで、目的によって変わります。

2万フィート台までであれば、機動するうえでそれほど意識しなくてもスムーズな操縦が可能です。3万フィートまで上がってくると、空気密度が落ちるので、意識して操作をしないとエネルギーがすぐに減ってしまいます。

4万フィートを超えてきたら、些細ささいなことでコントロールがきかなくなり、致命的なミスにもつながりかねません。エンジンパワーも速度も落ちやすくなります。そうなると、再び加速するのは難しいので、位置エネルギーを利用して、つまり、降下することによって速度を上げ、また上昇しなければなりません。

この“二度手間”を避けるために、細心のコントロールで速度を維持することが必要になります。

急旋回時、パイロットを襲う強烈な「G」

ジェットコースターや戦闘機の話題が出たとき、「G(ジー)がかかる」「Gがすごい」というような表現を聞いたことはないでしょうか。

Gとは加速度、つまり速度が急激に変化する際に物体に働く力のことです。地上で地面に立っている状態が1Gです。旅客機が離陸するときに感じるGは1.3~1.5G、ジェットコースターの場合で約3Gです。そして、戦闘機のパイロットにかかるGは、F-15の場合で最大9Gにも達します。

Gには方向があります。旅客機の離陸時にかかるGは、後ろ方向にかかるGです。自動車で急カーブを切るときには横方向、いわゆる「横G」です。

戦闘機のパイロットに強いGがかかるのは、加速時ではなく、主に急旋回時です。急旋回するときは、機体を大きく傾けて機首を上げるようにして方向を変えます。このときパイロットの頭上から下半身に向けてたて方向にGがかかります。これを「プラスのG」と呼びます。

旋回中のF-15
旋回中のF-15。パイロットには強いGがかかる(出所=『元イーグルドライバーが語る F-15戦闘機 操縦席のリアル』)

イメージするなら、水を入れたバケツをブンブン回すようなもので、水は遠心力でバケツの底に張り付くため、横にしても逆さにしてもこぼれません。この“水”が、急旋回しているときのパイロットです。