人類の歴史上、普通の人々がバーチャルな幸福感に浸れるようになったのは、長く見てもこの100年くらいのことです。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介さん

それ以前は、身を粉にして働かなければならない日々の中で、快感のスイッチが入る機会は稀にしかありませんでした。収穫祭やたまのお祭りといったハレのとき。あるいは1日の労働を終えて「ああ、ご飯だ」というときに快感が走ったりしたのかもしれませんが、その頻度は現代人に比べてはるかに少なかった。

脳内の快感物質は麻薬のようなものです。快感を連続して入力するということは、麻薬を絶えず脳内に分泌している状態なので、中毒化します。言ってみれば慣れが生じて、同じ分量の快感物質では同じ気持ちよさを感じられなくなる。同じ気持ちよさを感じるためには、より多量の快感物質を必要とします。それができないと、現状維持をしているだけで“前より状況が悪くなってはいないのに”、「自分は不幸だ」と感じるようになる。