もう1つ重要なことは、「生活水準で勝ち負けを測らない」ということ。経済的格差が同世代の間だけでなく、異なる世代間でも年齢とは逆行する形で広がっています。今、30代で妻がフルタイムで働き、ダブルインカムで世帯年収が2倍以上という夫婦も増えています。が、上の世代で自分の給料を2倍にすることは難しい。自分が出世しさえすれば勝ち組ではなく、配偶者次第で世帯年収にかなりの格差がつく時代になったのです。今の40代が結婚した10~15年前は、ほとんどの妻が結婚や出産で退職して専業主婦になっており、多くのサラリーマンがそれで当たり前と思っていたと思います。今になって結婚が1つの格差要因と気がついてももう遅いわけです。
日本はやり直しのきかない社会です。よほど専門性の高い資格でも持っていないかぎり、1度社会を離れた妻が高給を取れる仕事につくことはほぼ不可能といっていい。今さら専業主婦の妻をパートに出しても経済的にあまり意味はなく、妻自身も働きたがらないはずです。夫が会社に行くだけで月収100万円もらえるのに、時給数百円の仕事で朝から晩まで働くのは誰だってイヤでしょう。多くの妻は、経済的に苦しいとき、「自分が働いてわずかな時給を得るよりも、夫の小遣いを削ればいい」というはずです。
こんな状況下において生活水準で幸福を測ろうとすることは、自分の不幸感をあおるだけです。それよりも家庭内での人間関係の向上に努めたほうがいい。
やはり大企業の中間管理職を務める50代の友人の話ですが、出世競争に先が見えてきたところで、すっかり料理上手の良き夫、優しい父親になった人がいます。素早い方向転換ですね。40代、50代ならまだ間に合います。急に家族に向き合おうとして「妻が相手にしてくれない」などと文句を言わず、夫婦揃っての趣味などを始めてみるといいのです。