2024年3月22日、小林製薬の紅麹を原料とするサプリメントによる大規模な健康被害が発覚した。国立医薬品食品衛生研究所客員研究員の畝山智香子さんは「令和7年3月の厚生労働省の最終発表での死亡は408人(延べ数、※1)、同じく3月に発表された大阪市の食中毒詳報での死亡は16人(2782例中、※2)となっている。被害者には、高齢者や持病のある人も多かった」という――。(第1回)

※1 厚生労働省「紅麹を含む健康食品関係
※2 大阪市「食中毒詳報 食中毒発生の探知

※本稿は、畝山智香子『サプリメントの不都合な真実』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

小林製薬のサプリ 公表遅れの経営責任焦点
写真=共同通信社
2024年7月、小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」

病気の人の摂取を想定していない健康食品

そもそも、健康食品は病気の人が使うことを想定していません。そのため、持病のある人が使用した場合の安全性や、他の医薬品との相互作用などは基本的に考えられていないのです。しかし実際には、ほかの薬を使用していたり、本人が気づかないだけで肝機能や腎機能に何らかの問題がある人が健康食品を使っていたりすることがよくあります。

高齢者なら、何らかの機能低下はあるのが普通でしょう。紅麹製品は「コレステロールが気になる方に」と宣伝されていました。コレステロール濃度は自分で知ることはできませんから、健康診断や医師の診察を受けたりして、自分はコレステロールが高めであると知った人たちが対象なのでしょう。

そういう人たちが、コレステロール濃度が高めだけれどもその他はまったく問題なく健康だと言い切れるでしょうか。実際、小林製薬の紅麹製品で健康被害を被った人たちの中には、持病があった人も含まれることが報道されています。

持病のある人は使わないよう周知すべき

小林製薬は届出の中で「疾病に罹患している場合は医師に、医薬品を服用している場合は医師、薬剤師に相談してください」と記載しているので、健常者が使用することを想定しているようですが、この表示だけでは伝わらないでしょう。事実、健康被害を訴える人に基礎疾患のある人が多いのは、この点が伝わっていなかったためです。持病のある人や他に医薬品を使っている人は「禁忌」(絶対使わないでください)くらいの表現が必要だと思います。

また、たくさんのメディアで商品をコマーシャルしていたのだから、その中で持病のある人は決して使わないようにといった注意喚起が、大きくなされるべきでした。日々膨大な量の健康食品の宣伝・広告を目にしますが、「病気治療中の人は使わないように」と警告をしているものは見たことがありません。

また、コレステロールが少し高い場合の第一の選択肢は食生活の改善です。にもかかわらず、もし医師に食生活を見直してみましょうと勧められたときに、いわゆる健康食品を使うことを選択したらどうなるでしょうか。