※本稿は、畝山智香子『サプリメントの不都合な真実』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。
意外と知られていない「食品の安全性」
私たちは毎日食品を口にしていて、食品が安全なのは当然のように思っています。そして学校で栄養や食育をテーマにした学習があったり、ときに食品安全問題のニュースを聞いたり本や雑誌で読んだりして、自分は食品の安全についてはよく知っていると思っているかもしれません。
でも実際に食品安全についての知識が必要な仕事をしてみると、知らなかったことや誤解していたことがたくさんあることに気がつくと思います。食品は私たちにとってあまりにも身近なので、ついわかっているような気になってしまうのです。そこでこの章では、食品の安全性についての基本を簡単におさらいしてみようと思います。
食品とは、私たち人間が生きるために食べてきたいろいろなものを指します。栄養があったり一部の化合物の構造がわかっていたりする場合もありますが、基本的には未知の化学物質のかたまりです。
本当に安全なのかどうかはわからない
どういうものが食品なのかという決まった定義はなく、時代や文化によって食べられるとみなされるものが違うこともあります。たとえば、日本人はフグを食べますが、多くの国ではフグは毒があるので食べられない魚です。一方で、毒キノコを食品として売っている国もあります。
一般的には食べて具合が悪くなるようなものは食品とはみなされません。今まで食べてきた経験、つまり食経験があるので、これは食べられるものだと考えられているわけです。でも食品添加物や残留農薬、あるいは動物用医薬品のような、事前に安全性の確認が必要なものとは違って、食品そのものは長期の安全性試験や成分分析をしてから食べられると判断しているわけではありません。そのため、現在流通している食品がどこまで安全なのか、実際のところはわからないのです。
食経験とは、過去の経験に基づくものです。そのため、たとえば病気を抱えた高齢者のような人など、過去の事例があまり蓄積されていないケースにおいても安全といえるか、完全にはわかりません。言ってみれば、人体実験をしているようなものなのです。


