2012年の「ミス東大」に選ばれた徳川詩織さんは、石川県金沢市の出身。東大卒のタレントも多い今、卒業後は芸能界入りかと思いきや、「お声をかけていただいた事務所もありましたが、もともと、そういう華やかな世界にいるタイプじゃないんですよ。自分で言うのも何ですが、コツコツ努力するのが性に合う、真面目な性格なんです」と笑う。
今興味があるのは、教育。今回紹介してもらった本の1冊がきっかけで、教育学部への進学を決めたそうだ。卒業後も教育に携わるような仕事に就きたいのだとか。
そんな詩織さんの紹介する本には、やはりどことなく「学校」を感じさせるものが多い。
「本好きの両親に育てられたので、小さいころから本が大好きなんです。だから、どの本を紹介しようかすごく迷ったんです。進路を『教育』に決めたのは、最近のことですが、結果的に学校が舞台のものや、先生が主人公の本ばかりになったのを見ると、ずいぶん前から教育に関心があったのかもしれません」
読書について伺うと、詩織さんの記憶は、保育園時代に遡(さかのぼ)る。「母もよく本を読んでくれる人でしたし、そのころには1人でも絵本が読めるようになっていました。保育園の『読み聞かせ』の時間が楽しみでしたね。小学生になってからは、月に2回、母と図書館に行って本を借りていました」
ちょうどそのころ読み始めたのが、「ぼくは王さま」シリーズ。架空の国の王様が主人公で、中世ヨーロッパ風のお城に住んでいるのに電話やコンピュータもあるというファンタジーだ。
「子供のころの私には、そのハチャメチャな設定が魅力的だったんだと思います。幼児期に読んだ本の魅力をうまく伝えるのは難しいのですが、夢中で読んだのは記憶に残っています」
おとぎ話的な設定が好きだった詩織さんも、小学校高学年になると、小説に興味を持ち始める。『兎(うさぎ)の眼』は、ゴミ焼却場がある町の小学校を舞台に、大学を卒業したばかりの新米教師が成長していく物語だ。
「1番好きなのは、授業参観で問題児だった鉄三くんが作文を読み上げるシーン。先生の思いが伝わり、感動して泣いてしまいました。先生の立場から話が進むストーリー展開は、子供のころの私の視野を広げることにつながったと思います」
このころから、徐々に自分より少し上の年齢向けの本を読むようになったそうだ。
「私には年の離れた兄姉がいるので、家には2人が子供のころに読んでいた本がたくさんあるんです。『兎の眼』ももともとは兄たちの本。ちょっと大人びた本を読むことで、背伸びしていたのかもしれません」