「以上」は「(それを)含む」ということだが…
では次に、日常のことばとして、「これ以上やったら、許さないぞ」という言い方について考えてみましょう。
算数や数学では、「以上」というのは「(それを)含む」ということになっていましたよね。
この言い方では「これ」が「含まれる」わけですから、現時点〔=「これ」〕で、すでに「許さないぞ」の領域に入ってしまっていることになりはしないでしょうか。くどい言い方をすると、正式には、「これを超える行為をやったら、許さないぞ」と言わなければならない、ということになってしまいそうです。しかし、そんなことはありませんよね。
実は、算数や数学では「『以上』や『以下』は、その数字・そのものを、『含む』」と定義していますが、日常のことばでは、そのような厳密な定義にしばられない使い方が多いのです。日常のことばでは、「以上」を、「(を)超える」の意味で(も)使うことがきわめて普通です。
「これ以上やったら」(日常のことば):「これ」を含まない
「8日以降」も、この「以上」と通じるところがあります。厳密な言い方の場合には「8日」を「含む」のですが、日常のことばとしては「含まない」と考える人も決して少なくはないのです。
約7割は「含む」と解釈しているが…
「『8日以降に』手続きをしてください」という例文で調査をおこなったところ、「手続きをしてよいのは『8日から』だ」〔=8日を「含む」〕という人が7割程度であったのに対して、「手続きをしてよいのは『9日から』だ」〔=8日を「含まない」〕という回答も2割程度ありました。また年代差があり、「含む」という回答は30代がもっとも多く、そして20代と70歳以上では少なくなっています。
場合によっては、「7日までは手続きができないので、8日以降に手続きをしてください」のように丁寧に言うようにすると、誤解を避けることができます。以上です。