いっぱい、短期間、けっこう、多少、すごくは「危険な言葉」

ビジネスにおける説明は、「定量」と「定性」の2種類があります。

「定量」は、物事を数値や数量で表せる要素のこと。一方「定性」は、物事が数値化できない要素のことです。

就職したてのころは、上司や先輩への報告は「定性的」になりがちでした。

・いっぱい入場者がいた
・短期間で終わらせた
・けっこう手間がかかる
・多少コストがかさむ
・すごく好評です

理由や根拠を問われているときに、これらの定性的な言葉を使うのは非常に危険です。なぜなら、相手が明確な数値を把握できず、消化不良のまま、会話が進行してしまうからです。

そうならないために、数字を使って定量的に説明するクセをつけてください。聞き手も数字が入ることで、そのデータに対してリアクションがとりやすくなります。

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ただし、定量的な説明がすべてよくて、定性的な説明がすべて悪いわけではありません。

私の家の近所に、はやっているイタリア料理店があるのですが、いちばんのオススメメニューのナポリタンの横には、「常連さんの70%はこれを頼みます」と、店長からのコメントが定量的に書かれています。

そしてほかのメニューには、

・シェフがひと夏研究してつくりあげたグラタン
・イタリア人が毎日楽しむフォカッチャ
・特別な日の食卓の真ん中に。仔羊肉のポワレ
・当店でいちばん辛い! ペンネアラビアータ

などと書かれていました。これは、「定量的なデータ」と「定性的な説明」を使い分けている好例と言えるでしょう。

伝えたいことは、ひとつだけでいい

私は企業から預かった膨大な経営戦略、商品開発、市場調査などの資料を徹底的に読み込み、その99.99%を捨て、ほんの数行のメッセージに凝縮する仕事をしています。

クライアントは自社や商品に思い入れがありますから、「あれも入れたい。これも入れたい。その情報にも触れないとほかの部署が怒る」といった事情を抱えています。

私はその際に、いったん事情をのみ込みつつ、「多くを言おうとするとひとつも伝わらなくなります」と、利用者の代弁者となって正論を伝えます。

とある経営者の方から「仕事上、いろいろなところでスピーチを求められるのだが、どうも話がうまく伝わらないし、盛り上がらない。朝会で社員向けにスピーチしている映像を見せるので、アドバイスをくれないか」と相談されたことがあります。

映像を見て私は「毎週、大事件が起きるならいざ知らず、ましてや経営会議でもないわけですから、訓示に20分もいりません。伝えたいことをひとつだけ選び、『今日はこれだけを話します』と前置きすると、社員の皆さんも『偉い人の話を全部聞かなければならない』というプレッシャーからも解放されるはずです」とお伝えしました。