※本稿は、井手やすたか『伝え方図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
伝え方の工夫で伝わる内容が変わる
同じ会社にいて、ほとんど同じ仕事をしているのに、
なぜかその人の言うことが魅力的に聞こえる。
そんな体験をしたことはありませんか。それが「伝え方」の違いであることに、なんとなくお気づきの方も多いのでは、と思います。
なぜ、おなじお願いごとでも、あの人が言えば通るのか。
なぜ、おなじ報告でも、あの人から受ければ成果を感じるのか。
なぜ、おなじ説明でも、あの人から聞けばわかりやすいのか。
なぜ、おなじ雑談でも、あの人と話していると楽しいのか。
本稿は、この「なぜ」の数々にせまるものです。
ことばには「何を伝えるか」と「どう伝えるか」があるのですが、日常生活では、人は「何を伝えるか」のほうを意識して生きています。
何をお願いしようか。
何を報告しようか。
何を説明しようか。
何を雑談で話そうか。
人に何かを伝えるときの判断を、「何を」の部分にまず大きく使ってしまっているんですね。ふつうの人は、その「何を」が決まってしまった時点で、あまり深く考えず、思うままにそれを伝えてしまいます。
でも、本当に重要なのは、それを「どう」伝えるかです。伝え方の工夫しだいで、伝わる内容が大きく変わります。良くもなる。悪くもなる。伝えたい内容の「価値」が変わるといっても過言ではありません。その最も大きな変数が「伝え方」にあるのです。
優れた伝え方を「伝え型」として図式化
うまくいく伝え方とは何なのか、世の中に数多ある具体的な事例を読み込んでいくうちに、私は思いました。
①うまくいく伝え方の「事例」を知るだけだと、「なるほどそういう伝え方があるのか」で終わってしまう
②その伝え方がなぜうまくいくのか、その「意味の構造」を本質的に理解することが大事
③さらに図式化することで、「あてはめるだけで使える」ようにすれば、すぐに役立つものになる
というわけで、優れた伝え方を誰にでもわかりやすく、誰にでも使えるようにするために、いろんな「伝え型」を図式化しようと考えたのです。
100種類の包丁を図鑑にするとして、その特徴だけを羅列しても意味がありません。どんな食材に向いてるか、なぜその刃の形なのか、どんな料理にベストなのか、理解してはじめて料理人の役に立ちます。
伝え方は、道具です。目的に合わせて使いこなすことがゴールであり、そのための「伝え型」、という形式。
このあと、具体的な状況の中で、いかに「伝え型」が機能するか、の事例を見ていただければと思います。