※本稿は、井手やすたか『伝え方図鑑』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
社内新人研修で「仕事論」を語ることに
ここでは、「抽象的なこと/曖昧なこと」を伝える型を事例をもとに紹介していきましょう。
ここでのケースは「営業の先輩として、社内新人研修の講師を依頼されたCさん」です。
「抽象的なこと/曖昧なこと」の代表的な例として「『仕事論』というテーマで自由に語ってください」と依頼されてしまったケースを考えてみたいと思います。
【状況】
今年で入社7年目のCさん。経験を積んだ営業の先輩として、また若手の悩みがわかる身近な先輩として、入社したばかりの新人たちに「仕事とは何か」を彼の視点から教えてほしいと人事部から依頼がありました。
彼は悩みました。伝えたいことはたくさん思い浮かぶけど、「仕事」という抽象的で曖昧なテーマを、どのような構成で伝えれば最も効果的なのか、さっぱり思いつきません。
何も考えず、とりあえずマイクを持って1時間しゃべるだけでもいいか……? とも考えましたが、それだとCさん自身がラクをできるだけで、新人たちにとって本当に充実した内容になるとは言い切れません。先輩としての威厳を見せつけるためにも、ぜひとも説得力のある研修にしたいところです。
そこで役に立つのが「伝え型」たちです。これらに一つずつ当てはめていくだけで、研修の内容はある程度完成するはずです。
「論理」と「感情」に分けると状況を整理しやすくなる
【「論理と感情」の型】
この型に則って、Cさんが考えた内容はこうです。
「仕事というものは、論理と感情を意識して分けて捉えるのが大切です。本質的に違う2つのものを1つの尺度で見つめてしまうから混乱しやすいのです。
たとえば、何か失敗してしまったとき。当然のように落ち込んでしまいますが、それは感情の話なんです。失敗したことを論理的に、冷静に見つめてみると、まずは迷惑をかけた関係者にお詫びの電話をしたり、二度と失敗しないように反省点をメモとして残したり、という論理的な行動ができるようになります。
そして、その行動とは別に、感情の部分をケアするために、落ち込んでいる気持ちを誰かに聞いてもらったり好きなアニメを観て発散したりして処理すればいいんです」
いかがでしょうか。「仕事で失敗したときはこうすべき!」と何の脈絡もなく説明されるよりは、より腑に落ちる内容になっているのではないでしょうか。