熊は嬉しそうにパンをパクつき始めた

「腹を空かせているらしいのでパンで釣ろう」と、パンを投げてやると、熊は嬉しそうにパクつき始めたので、銭湯から借りてきたおがくず入れの竹かごで捕まえた。

もう1匹の雄熊「コロッケ君」は、隣の庭の杉の木に登っているところを発見された。はしごの先にパンをくくりつけておびき寄せ、地面に下りたところを竹かごで捕まえたという。

熊が財布を拾ってきた話

最後に、熊が大金の入った財布を拾ってきたという挿話をご紹介しよう。

日光の金谷ホテルで飼育している牝熊を一日午後四時半ごろ大谷川に面した野つ原で運動させていると藪の中からズッシリ重い札入れをくわえてとび出した。なかに邦価に換算して八百圓の外国紙幣が入っている! 調べてみると去る十八日同ホテルに投宿したイタリー観光団十八名の一行中、新聞記者カルヂニー・ラフイルノ君の札入れだった、これについては日光署の外事係りが国観日本の面目にかけて犯人捜査中だったが皆目見当がつかず匙を投げようとしていた矢先だった、この報せを受けた係官「日光中くまなく探したんだが……」と首をかしげながらも大喜び もっとも中身の日本紙幣十五圓は消えていたが……これで一応観光日本の面目がたつと同ホテルでもこの熊公にとびきりの御馳走をして大喜びである(日光発)(「読売新聞」昭和12年3月2日)

日光の金谷ホテルで、飼育しているメス熊を運動させていると、熊が藪の中からずっしりと重い財布をくわえてきた。中には日本円で800円ほどの外国紙幣が入っている。調べた結果、イタリアの観光客が落とした財布だった。関係者は日本の面目が立ったと喜び、熊にとびきりのご馳走をしたという。

このエピソードを見ても、熊の知能の高さがうかがえるわけだが、だからこそ餌付けなどは絶対にしてはならない行為である。

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