自分にとって本当に大事な相手とはどのような人か。老年精神科医の和田秀樹さんは「遠慮しなければ成り立たない関係なのであれば、夫婦であろうが、親友であろうが、その時点で『いい関係』とは言えない。自分にとって大事な人とは、本当に気が合い、心の支えだと感じられて、互いに愛情を持ち、一緒にいると心が安らぎ、何でも打ち明けられる人である。そこの峻別をしっかり行い、自分にとって本当に大切な人間関係を見極める必要がある」という――。

※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

夕食を食べる老夫婦
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人目を気にしていると、結局損をする

人に嫌われたくない。そう思っていると、自分が他人にどう思われているかが絶えず気になります。

しかし、人の目を気にするのは、多くの場合「独り相撲」です。

まず、見ず知らずの人には、どう思われたとしても、基本的に実害はありません。

人に迷惑をかけるようなことをしていない限り、赤の他人にどう思われたとしても、自分には何の関わりもないことです。

会社勤めをしている人が社内の人の目を気にする、あるいは子育て中の人がママ友の目を気にする、というのはわかります。

たとえば、羽目を外して遊んでいるところを同僚やママ友に見られて、よからぬ評判を立てられたら、場合によっては仕事に支障が出たり、ママ友の集まりに参加しづらくなったりするでしょう。

何らかの利害関係がある相手であれば、その目をある程度は気にせざるを得ません。

ところが、会社を定年退職したり、子どもが独立したりして、すでに実質的な利害関係がなくなったあとも、元同僚や元上司、かつてのママ友といった人の目を気にし続ける人が少なくないのは、やや奇妙に感じられます。

老年精神科医として、アンチエイジングに関する提言を行っている立場から言えば、そんなふうに人目を気にしていると、結局損をすることになります。

「年甲斐もない」などと他人に思われることを気にせず、興味や関心があるのだったら多少派手な服を着たり、美容に力を入れたり、思い切った髪色に染めてみたりするほうが、むしろ若返って、残りの人生をより楽しめるようになることが多いからです。