※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
相手がいい人か悪い人かは試してみないとわからない
歳をとると、人生経験が増える分、自分の「人を見る目」を過信したり、思い込みで人のことを決めつけたりする人が多くなります。
相手がいい人か悪い人か、自分と気が合うか合わないかは、実際につき合ってみなければわかりません。にもかかわらず、つき合う前からそれがわかっていると錯覚している人がよくいます。
試してみないとわからないことに対して、試す前から答えを出している。それは、脳の老化で前頭葉が萎縮し、思考が硬直化しやすくなっていることの現れでもあります。
「老後は友達がいないと不幸」などという言説にとらわれて、地域のサークルやボランティア活動に参加してみるものの、結局うまくなじめずストレスをためる、というパターンはよくあると思います。
人間関係は、無理をしてつくるものではありません。
脳トレでも運動でも何でもそうですが、自分自身の気が進まないものは続かないし、続けたとしてもストレスになります。すると、ストレスによって免疫機能が低下し、病気になるリスクが上がります。
心身の健康を保つためにしていることが、かえって健康を害することにつながるとしたら、本末転倒です。
とはいえ、「どうせ友達はできないんだから、集まりに参加するのは時間の無駄」などと、はなから決めつける必要もないと思います。
ある程度の年齢になれば、たいていの人は時間に余裕があるはずです。歳をとったら「暇なことが取り柄」とさえ言えるでしょう。
「試しに人に会ってみる」「試しにサークルに参加してみる」といったことがしやすいのは、時間に余裕がある世代の特権のようなものです。高齢期になったら、「時間を無駄にする」ということは、あまり意識しなくていいと思います。
試してみても、そううまくいくものでないのは事実です。ハズレの結果になることが多いことを認識したうえで、実験だと思って試してみればいいのです。