伊勢丹から逃げた熊が新宿で大暴れ
昭和12年6月には、なんとひと月に2回も、都内で熊が脱走している。
「北海道の熊公 新宿でひと暴れ」
東京新宿の伊勢丹で開かれている「北海道展覧会」にやとわれた亀田郡七飯村鍋谷氏所有の小熊君二頭、去る一日主人公に曳かれ晴れの帝都入りをしたまではよかったが山の奥の様子とはあまりにも変わったはなやかさに熊君“うオ……”とびっくり仰天、たちまち檻を破って新宿街頭に躍り出したからたまらない、帝都の一角はこれがために上を下への大騒ぎを演じた、だが熊君程へて主人公の手に捕らわれ再びもとの檻に逆戻り、雨降って地かたまるとはこのことで今では展覧会中の人気者(「小樽新聞」昭和12年6月5日)
新宿の伊勢丹で開かれた「北海道展覧会」の熊が檻を破って新宿の街へ逃げた。上を下への大騒ぎになったが、無事捕まり、展覧会の人気者になったという。
豊島区長崎で脱走した2匹の子熊
「熊公脱走 納涼スリル」
二十六日夕方六時頃、豊島区長崎中町1-279号、国華ダンスホール経営者、植木三郎さん方の女中、中米正代(24)さんが庭に飼ってある(中略)熊の檻の扉が開いて、雌雄二匹の仔熊(生後一年八カ月)の姿が見えないので仰天、目白署仲町交番へ急報した。(中略)巡査の4人が駆けつけ、まず付近一帯へ「熊が逃げましたから用心してくださアい」とふれ回ったので、近所の者は青くなって家の中へ逃げ込む騒ぎ、そこへ同町二七四二植木屋、吉田甚太郎さん方から「うちの裏の竹藪の中に一匹います」という注進、捜査隊が行ってみると、雌の方が竹藪の中でガサゴソやっている。「腹が空いているらしいからパンで釣ろう」と案じた首藤部長の一策見事に、パン一片を投げてやると熊公、嬉しそうにパクつき始めたので、植木家の同居人、大野大(二四)君が勇をふるって付近の銭湯から借りてきたオガクズ入れの竹籠を伏せて逮捕。
さてもう一匹の雄のコロッケ君は植木さん方の隣家、凸版会社員■田庄六さんの庭の一丈ばかりの杉の木に登っているのを発見、梯子の先へパンをくくりつけて熊公の鼻先へ突きつけると、こやつも腹ペコと見えて、しきりにパンを掴み取ろうとする。だんだん梯子を下げると、熊子もパンの破片を追ってとろうと地面へ下りたので、例の竹籠でまたバサリ。(「読売新聞」昭和12年6月27日)
豊島区長崎中町のダンスホール経営者、植木三郎さんの女中、中米正代さんが庭に飼っていた、雄雌2匹の熊が逃げた。巡査4人が駆けつけ、「熊が逃げたので注意してください」と触れ回ったので、近所の人々は青くなって家に逃げ込んだ。同じ町の植木屋の吉田甚太郎さんから「うちの裏の竹藪に1匹います」と連絡があり、捜索隊が向かうと、雌熊がいた。