2023年、飲酒運転による死亡事故は112件(前年比8件減)となり、2000年以降で過去最少となった。重傷事故は323件で前年から49件増えた。なぜ飲酒運転はなくならないのか。ジャーナリストの柳原三佳さんは「酒を飲んで死亡事故を起こしても、呼気中のアルコール濃度が基準値を大幅に上回らなければ過失運転(運転ミス)として扱われる。警察の呼気検査だけでは不十分であり、実際の数字はもっと多いのではないか」という――。

長男は春に高校生になるはずだった

「先日の記事(「スマホを触っていない」と言えば執行猶予に…21歳女子大生の遺族に検察官が放った“信じられない一言” 「ながら運転」に甘すぎる警察と検察の驚きの実態)を読ませていただきました。息子の加害者も運転開始前に酒を飲みながらスマホゲームをしていたことが分かっていますが、加害者の供述から単なる前方不注視とされました。死亡事故が起こってもスマホすら調べないなんて、一般の方は信じられないでしょう。私も息子が被害に遭うまでは、知りませんでした」

そう語るのは、2015年3月23日、長野県佐久市で長男の樹生みきおさん(当時15、中学3年)を飲酒運転によるひき逃げ事件で亡くした和田真理さんです。

2014年8月3日撮影。15歳の誕生日を迎えた和田樹生さん。
写真提供=和田さん
最期となる15歳の誕生日を迎えた和田樹生さん。

加害者の男(当時42)は、この日の午後10時ごろ、事故直前まで飲食店で約2時間酒を飲み、そのままハンドルを握って、塾帰りに自宅前の横断歩道を渡っていた樹生さんを、中央線をはみ出し、スピードオーバーではねました。しかし、樹生さんを救護することなくコンビニへ直行し、口臭防止のタブレットを購入。歩道に倒れていた樹生さんのもとへ現れたのは、衝突から10分ほど経過してからのことでした。

樹生さんが事故に遭った横断歩道。
筆者撮影
樹生さんが事故に遭った横断歩道。横断していたところ、乗用車にはねられ亡くなった。