家族や友人など、身近な人から性被害を打ち明けられたらどうすればいいのか。弁護士の上谷さくらさんは「被害者の中には、性被害よりも周囲の言動による二次被害のほうがつらかったという人が多い。もし相談されたときは、被害者の落ち度があるような言葉をかけてはいけない」という――。

※本稿は、上谷さくら『新おとめ六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

身近な人の誤った言動で傷がいえないことも

犯罪被害には、生命・身体・財産などを侵害されるさまざまな被害(一次被害)があります。そして、その一次被害に起因して、周囲の人の言動などで被害者が傷つけられるのが「二次被害」です。

一次被害よりも二次被害のほうがつらかったという被害者はとても多いです。二次被害は、被害回復を遅らせる要因になります。

セーターとミニスカート、ピンク色のバックパックを着用した若い女性
写真=iStock.com/Wiphop Sathawirawong
※写真はイメージです

警察庁の調査によると、二次被害の相手は、①加害者関係者(加害者本人・家族、加害者の弁護人など)、②捜査や裁判等を担当する機関の職員(警察、検察官、裁判官など)、③同じ職場・学校に通っている人、④家族・親族……の順に多くなっています。

しかも、加害者よりも、身近な人からの二次被害にあった人ほど、被害回復が妨げられていることが明らかになっています。

二次被害により回復が遅れ、それまでの人間関係が壊れてしまう人もたくさんいます。「自分は被害にあっても毅然としていられると思っていたのに、全然違っていた」という方は少なくありません。

自分の意思とは関係なく、朝起きられない、食事が取れない、眠れない、外に出られない、勝手に涙が流れてくる、といったことは、被害にあうと誰にでも起こりうることです。

犯罪被害にあうことがその人にどれだけ重大な悪影響を及ぼすのか、しっかりと理解して被害者に接することが重要です。

「その気があったんでしょう?」「警察沙汰を起こすなんて恥だ」

【相談1】
性被害にあって、刑事裁判が行われているのですが、「美人局つつもたせだろう?」「被害者ヅラやめろ」などという誹謗中傷が、SNSにたくさん届きます。匿名ですが、身近な人しか知らない情報も書かれているので、知り合いなのではないかと疑心暗鬼になっています。

そのような状況は明らかな二次被害です。刑法の名誉毀損罪や侮辱罪にあたる可能性があります。このような誹謗中傷は許さない、という趣旨で、侮辱罪が改正されて刑が重くなりました。警察に相談して、相手を特定して立件してもらうことも検討しましょう。

二次被害には次のようなものがありますが、これらはほんの一部です。

1.友人、恋人からの言葉
●「夜遅くに歩いているほうが悪い」
●「被害なんて言ってるけど、あなたもその気があったんでしょう?」
●「忘れたほうがいい。時間が解決する」
●「あなたが警察に行かなかったら、他の人が被害にあうから行くべきだ」

2.親、きょうだい、配偶者などの家族からの言葉
●「世間体が悪いから黙っていて」
●「警察沙汰を起こすなんて恥だ」
●「なぜ今頃言うの? 自分が悪いから黙っていたんでしょう?」
●「いつまでそうやって落ち込んでるの?」