10年にわたって性加害を繰り返してきた30代男性

犯罪者も人の子であり、人の親であることもある。加害者家族の支援に従事する筆者は、これまで数多くの凶悪犯と呼ばれる犯罪者と対峙してきたが、その素顔は意外にも、優しい夫、良き父親であることは珍しくない。仕事も家庭も手に入れ、傍から見れば恵まれた環境にいるはずの男を凶行に駆り立てたものは何だったのか。本稿では、尊厳を踏みにじり、卑劣極まりない蛮行を繰り返していた凶悪連続性犯罪者の素顔に迫る。

窓に手のひらを押し当ててこちらを見ている人
写真=iStock.com/liebre
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なお、プライバシー保護の観点から登場人物の名前はすべて仮名とし、個人が特定されないようエピソードには若干の修正を加えている。

九州地方に暮らす田口剛(30代)は、夜間に独りで歩いている女性に背後から忍び寄り、刃物を突き付け自分は暴力団員だと脅し口淫させ、行為の一部始終を録画し、警察に言えば動画を拡散させると口止めして逃走した。

剛は10年近く、同様の犯行を繰り返していたが、立件されたケースは7件にとどまった。

「あの日から、血が出るまで歯を磨くようになりました……」

被害者の30代の女性は、法廷で涙ながらに現在も続く苦しみを訴えており、涙を流して聞いている裁判員もいた。

被害者には未成年者も存在した。

「娘は一時期、不登校になりました……。登校するようになってからも、家に帰ってくるまでが心配で……。この不安から、いまでも逃れられないのです……」

傷を抱えているのは被害者だけではない。その家族もまた、被害者同様に事件の傷に悩まされ続けていた。

「鬼畜!」

被害者たちが語るあまりに惨たらしい犯行態様に、傍聴席からは怒りの声が上がったが、被告人席の剛は終始無表情で、その様子から改悛の情など微塵も感じられなかった。

「被害者の話を聞いていましたよね? 自分がやった事、ちゃんと認識できていますか?」

まるで他人事のような態度の剛に、苛立ちを隠せなくなった裁判官が怒りを込めて問いかける場面も見られた。