元教師が児童へのわいせつ行為で逮捕
筆者は、加害者家族の支援に従事しているが、近年、当団体に寄せられる相談で目立つのが、高齢者による犯罪である。
性犯罪者といえば若者を想像するかもしれないが、高齢者が加害者となるケースも年々、増えている。たとえば、2014年における高齢者の検挙人員は1986年と比べて、強姦(改正刑法が施行され、現在の罪名は「不同意性交等罪」に変更されている。)では約7.7倍(3人から23人)、強制わいせつ(改正刑法が施行され、現在の罪名は「不同意わいせつ罪」に変更されている。)では約19.5倍(11人から215人)に増加している。(*1)
ここでは、ある日突然、高齢者の親が性犯罪者となってしまった家族の事例を紹介したい。彼らはなぜ、性犯罪に手を染めることになってしまったのか。なお、プライバシー保護の観点から登場人物の名前はすべて仮名とし、個人が特定されないようエピソードには若干の修正を加えている。
佐々木茂雄(70代)は定年退職後、小学校に通う児童が安全に登下校できるよう見守るボランティア活動を行っていた。
茂雄はかつて、学校の教師をしており、退職後も町内会や地域の行事に積極的に参加するなど、地域の人々からの信頼も厚かった。ところがある日、茂雄が児童にわいせつな行為を行ったとして逮捕されたというのだ。
茂雄の家族も地域の人々も、最初は冤罪事件ではないかと疑った。ところが茂雄は容疑をすべて認めていた。
茂雄は、下校途中の女子児童にお菓子を食べていくようにといって自宅に連れ込み、わいせつな行為を行っていた。犯行当時、自宅には妻もおり、お茶の支度を手伝っていた。知らない大人について行ってはいけないと躾けられている児童も、さすがに見守りボランティアの高齢者に対しては警戒心を解いたことだろう。
私は遠方に暮らす茂雄の長男から相談を受けていた。事件の影響が最も深刻だったのは犯行現場にいた茂雄の妻であり、警察の事情聴取では、耳を塞ぎたくなるような事実を知らされ、「もう、生きるのが辛い……、死んでしまいたい」と、食事も喉を通らず寝込んでしまった。
(*1)法務省「性犯罪に関する総合的研究」