砂糖が入ってなくても口の中は酸性になりやすい
この酸は唾液によって中和されるだけでなく、溶け出した歯の表面が唾液によって修復されるからである。うまくできたものである。だが、砂糖の摂取を続けると、唾液による歯の修復が間に合わなくなり、虫歯になる。それなら、虫歯菌のエサである砂糖を含まないソフトドリンクなら虫歯ができない、と思うかもしれない。だが、残念ながら、そうはいかない。
人工甘味料の入ったソーダやスポーツドリンクなどには、砂糖こそ入ってないものの、口内を酸性にしやすい。なぜならば、砂糖を含んだドリンクにも砂糖を含まないドリンクにも、クエン酸とリン酸が大量に含まれているからである。クエン酸もリン酸も立派な「酸」であるため、虫歯をつくる原因となる。要するに、酸の多いドリンクは虫歯菌という虫歯の媒介者を除外しているに過ぎない。
砂糖を大量に含んだドリンクを飲めば、細菌が砂糖をエサにして酸をつくるが、人工甘味料の入ったソーダやスポーツドリンクを飲めば、歯全体が「酸」にドップリ浸かることになる。この酸が歯のエナメル質を溶かし、虫歯をつくる。虫歯の初期段階では、歯のエナメル質が侵食によってはがされる。さらに奥の象牙質まで侵食が進むと、甘いものや冷たいものがしみるようになる。
エナジードリンクの酸性度はスポーツドリンクの2倍
シュガーフリーを謳うエナジードリンクやスポーツドリンクは、ソフトドリンクよりも歯にいいかというと、そうではない。アメリカの調査では、エナジードリンクの酸性度(ph3.2)はスポーツドリンクの2倍も強かった。通常、唾液のphは6.8~7.0で中性であり、これらのドリンクによって低下したphが元に戻るのに約30分かかる。この30分間、歯は酸に浸されている。
大抵の人は、エナジードリンクやスポーツドリンクを飲んだときに、以下に示す適切な行動をとらない傾向にある。このため3人に1人の子どもは虫歯を持ち、しかもエナメル質が傷つくと、虫歯菌が付着しやすくなるため、虫歯がさらに進行しやすくなる。
では、虫歯を防ぐにはどうすればいいのか。明らかな解決策は、酸を大量に含んだ甘いドリンクを一切飲まないことである。だが、甘いドリンクを飲んでしまった人、あるいは、飲むことをやめられない人のために対策を紹介しよう。
・素早く飲む。早く飲み終えるほど、酸が口の中にとどまる時間を短縮できる。唾液のphをより迅速に中性に戻すことができる。
・ストローを使う。ストローを使うことで、歯が酸に浸る時間を減らす。
・口を水ですすぐ。酸を大量に含んだドリンクを飲んだ直後に、歯を磨く前に口を水ですすぐ。
・歯を磨く。
酸を大量に含んだドリンクを飲んだ後に、口を水ですすぎ、歯を磨く。それから、寝る前に酸を大量に含んだドリンクを飲まないことも忘れないでほしい。そうしないと、酸が一晩中あなたの歯を侵食することになるからである。