約8万人を対象にした実験でも体重増加が見られた
アメリカがん協会からの資金提供を受けて行われた7万8000人の女性を対象にした研究でも、サッカリンを使用することによって体重が増えることが報告されている。ネズミを使った実験でも、人工甘味料を加えたヨーグルトを摂取したネズミは、プレーンヨーグルトを摂取したネズミにくらべ、食事全体の摂取量が多く、体重も増加していた。人工甘味料で体重を落とすという目標は、達成できなかった。
それから、人工甘味料は安全性に心配があるので、使用を避けるのが賢明な選択、と私は思っている。やせたいなら、コーラやジュースを飲むのではなく、水を飲むといい。アザド教授は、もう人工甘味料を使用していない、という。「毎日、私はコーヒーに人工甘味料のスプレンダを入れて飲んでいたのですが、今は、ミルクに代えました」。
人工甘味料であったとしても虫歯になる
人工甘味料は虫歯ができにくい
経験的に知られていることだが、アイスクリーム、チョコレート、ケーキなど砂糖が大量に入った食べ物を日常的に食べると虫歯ができやすい。甘いものを食べたいが、虫歯が恐い。虫歯は砂糖が原因だとすると、人工甘味料を使えば、虫歯ができにくくなるのか?
ウソである。
虫歯は、プラーク(歯垢)の中に住む細菌がつくる酸によって歯が溶ける病気である。砂糖を例にして、どのように虫歯ができるのかを説明しよう。歯の表面や歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間には、白いネバネバした塊が付着している。これをプラークと呼んでいる。
プラークの中にバイ菌が住んでいる。名前を虫歯菌という。虫歯菌は砂糖をエサにして生きているが、このときに「酸」ができる。この酸によってプラークのphが低下する。これが何を意味するのか。
phは、水溶液がどれだけ酸性が強いか、または弱いかを示す物差しで、水素イオン濃度ともいう。phは1~14まであり、中性は7、酸性は1~6、アルカリ性は8~14である。phは指数で表記されるため、ph5.0の水素イオン濃度は、ph7.0の中性よりも100倍も高い。たとえば、0.1%の砂糖水を10ml飲むと、プラークのphは5.0以下になる。唾液のphは通常6.8〜7.0であるから、砂糖水は、プラークの酸性の度合いを100倍も高めることがわかる。
一方、歯の表面を覆うエナメル質は、リン酸カルシウムでできていて、ph5.5以下になると急激に溶け出す。だから、砂糖を食べると、歯のエナメル質が溶け出し、虫歯になりやすい。しかし、経験から私たちは、そう簡単に虫歯にならないことも知っている。