ダイエットに人工甘味料は使えない
人工甘味料を使用すると、喧伝されている効果や私たちの期待とは裏腹に、太ることが明らかとなった。論文の著者のひとりアザド教授は、こういう。
「多くの人々はカロリーゼロなら、健康被害ゼロと思い込んでいます。しかし、この研究を通して、私は、体重管理はカロリーだけではない何かがあることを認識しました」
つまり、体重管理は、私たちが考えている以上に複雑なしくみで行われているようである。この新しい研究によって、人工甘味料は体重管理を解決するための特効薬や「魔法の弾丸」ではないことが明らかになった。
同じく人工甘味料の研究を続けるパーデュー大学心理学科のスーザン・スウィザース教授は、この論文にかかわっていない中立の立場で、こう慎重に述べている。
「残念ながら、体重を落とすことを目的とした人工甘味料の有効性を支持する有力な証拠は存在しません」
これは学者らしい慎重な言い回しであるが、要するに、人工甘味料にやせる効果はない、と断言しているのである。それどころか、人工甘味料は人を太らせる。この理由は何か。
ゼロカロリーでも“太らせるホルモン”が放出される
じつは、人工甘味料にはふたつの問題がある。ひとつめは、人工甘味料が私たちの味覚を鈍くすること。
人工甘味料の甘さに慣れると、非常に甘いものでないと満足できなくなり、それまで以上に甘いものを求めるようになる。甘みを受け取る甘味センサーが、人工甘味料の強い甘さに適応するのである。しかも、甘味センサーは舌だけでなく、胃、腸、膵臓にも存在する。
胃の甘味センサーが甘みを感知すると、グレリンというホルモンが放出される。グレリンは、脳の視床下部にある摂食中枢を刺激し、食欲を湧き出たせる。しかも人工甘味料の刺激は砂糖よりも格段に強いため、食欲が極度に刺激され、大食いして太る。
ふたつめは、人工甘味料がインスリンを放出させること。そもそもインスリンは、人を太らせるホルモンである。なぜか?
血液中に溶けているブドウ糖は筋肉でエネルギー源となって消費されるか、脂肪組織に取り込まれて体内に蓄積する。どちらの道に進むかを決定するのが、インスリンの量である。インスリンが少なければ、ブドウ糖は筋肉に行って消費されるが、インスリンが多ければ、ブドウ糖は脂肪組織に取り込まれて体内に蓄積するので、太る。
砂糖はインスリンを大量に放出させるので、人を太らせる。だが、砂糖だけでなく、人工甘味料もまたインスリンを放出させ、太らせることが報告されている(*2)。
(*2)Mathur K et al. Effect of artificial sweeteners on insulin resistance among type-2 diabetes mellitus patients. J Family Med Prim Care 2020 Jan; 9(1): 69–71. PMID 32110567