水はたくさん飲んだほうがいいのか。科学ジャーナリストの生田哲さんは「生命維持のために水は欠かせないが、水を飲みすぎると『低ナトリウム血症』となる恐れがある。飲みすぎには注意が必要だ」という――。(第2回)

※本稿は、生田哲『「健康神話」を科学的に検証する』(草思社)の一部を再編集したものです。

水の入ったコップを持って制止のジェスチャーをする人
写真=iStock.com/AaronAmat
※写真はイメージです

なぜ水道水ではなくミネラルウォーターを飲むのか

【神話】
ペットボトルの水は水道水よりも美味しくて体にいい

人体の60%は水でできている。だが、この無色の物質について私たちの知識は十分ではないため、いくつもの噂が流布している。そこで、水についての神話を解明しておこう。外出先でノドが渇いたときに飲むミネラルウォーターは、冷たくて美味しく感じられる。

ペットボトルのラベルには「何とかの名水」「しかじかの天然水」「かくかくの氷河」など、原始の氷河や名山から湧き出た特別な水などと記載されているから、なるほど、うまくて、健康にいい、と思うが、本当なのか?

【科学的検証】
ウソである。

ペットボトルに入れられた水がミネラルウォーターとして販売され、毎年、消費量が右肩上がりで伸びている。日本ミネラルウォーター協会によると、日本国内におけるミネラルウォーターの国内生産量と輸入量の合計は、過去40年間、増加を続けてきた。その合計は、1982年に8.7万トンだったが2020年に418万トンへと、なんと50倍近くも跳ね上がった。国民ひとり当たりの年間消費量も、2005年の14.4Lから2020年には33.3Lへと2.3倍に伸びた(*1)

【図表1】ミネラルウォーター類の国内生産、輸入合計の推移
ミネラルウォーター類の国内生産、輸入合計の推移(出所=『「健康神話」を科学的に検証する』p.181)

ペットボトル入りの水(ミネラルウォーター)は、1本500mLが約100円で販売されている。一方、家庭で蛇口をひねれば出てくる水道水はほぼ無料である。それでも人々は嬉々としてペットボトル水を購入する。驚くほど鷹揚おうような態度である。普段は5円、10円高いか安いかで大騒ぎするほど価格に敏感な人々が、いったいどうしたのだろう。

(*1)日本ミネラルウォーター協会 https://minekyo.net