大都市の高い生活費は子供の人数を減らす効果がある
大都市では、与えられた土地当たりに住みたいと考えている人の人数が多くなります。すると、土地の値段が上がります。値段の高い土地に建てられた住宅、マンション、アパートの値段は当然高くなります。マンションやアパートが賃貸に出された場合においても、支払われる家賃で土地代や建物の建設費を回収しなくてはならないので、当然家賃が高くなります。
つまり、大都市に住む場合、高い住居費を負担しなくてはならないことになります。さらに、土地代が高いため、それを負担して店舗を経営しているスーパーマーケットが売る商品、レストランが提供する外食等、生活に必要なものの価格が軒並み高くなります。住居費に加え、全ての商品が高い傾向にあるため、大都市では生活費が高くなります。このような大都市の高い生活費は子供の人数にどのような影響を与えるでしょうか。
生活費が高くなることは、持っている所得の価値が目減りしてしまうことを意味します。1カ月の賃金が30万円だとしても、家賃が5万円、食費に5万円という地方都市での生活と比較すると、家賃15万円、食費に7万円かかる東京での生活では、子供の人数が減ってしまうことは容易に想像がつくでしょう。
つまり、大都市の高い生活費は子供の人数を減らす効果があるのです。
大都市での子育ては経済的なデメリットが大きい
大都市ではさまざまなタイプの集積の経済が働くことにより、労働生産性が高くなることが知られています。労働生産性が高くなると、賃金水準も高くなります。賃金が高くなると、持ちたい子供の人数が変化します。賃金が高くなると、子供を育てることの機会費用が高くなり、働く時間を削って子育てをするインセンティブが減ります。
しかし、同時に賃金が高くなることは夫婦の所得が増えることを意味します。所得の高い夫婦は、たとえお金がかかってもより多くの子供が欲しいと考えるでしょう。賃金が高くなることには、子育ての機会費用を増やして子供の人数を減らす効果と、所得を上げて子供の人数を増やす効果の両方があるのです。
まとめると、大都市に住むと、①生活費が上がる、②賃金が上がることで子供を育てることの機会費用が上がる、③賃金が上がることで所得が上がる、以上の三つの効果が子供の人数に影響を与えます。
①と②の効果は子供の人数を減らしますが、③の効果は子供の人数を増やします。筆者と経済学者の佐藤泰裕の研究によると、①と②の効果の合計は③の合計を上回り、農村や地方都市に住む場合と比較すると、大都市に住むことで子供の人数は減ってしまうのです。つまり、大都市の出生率は低く、人々の大都市圏への移住は、大都市圏での生活費が高いこと、子育ての機会費用が高いことを通じて、子供の数を減らすのです。