ほぼすべての先進国では少子化が進んでいる。とりわけ大都市ほど深刻だ。大阪大学大学院の山本和博教授は「都市部ではレストランやアパレルなど魅力的な消費財が多く、所得の価値が高い。このため結婚や出産よりも、所得を増やそうとする人が増えてしまう」という――。(第2回/全2回)
※本稿は、山本和博『大都市はどうやってできるのか』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。
「東京一極集中」と少子化にはどんな関係があるのか
2014年、1冊の本の出版が衝撃を引き起こしました。増田寛也編『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』という本です。この本では日本の少子化の現状が豊富なデータによって綴られ、全国の自治体の49.8%に当たる896の自治体で2010年から2040年までの間に20歳から39歳の若年女性の数が半分になってしまう「消滅可能性都市」にあることが示されたのです。
『地方消滅』では、東京一極集中こそがその原因であると言われています。確かに東京一極集中によって農村部や地方都市の人口は減りそうです。しかし、少子化とは、文字通り子供の数が減ることです。東京一極集中と少子化の間にはどのような関連があるのでしょうか。
少子化は、人々が持つ子供の数が減ることによって引き起こされます。人々が持つ子供の数は、「合計特殊出生率」という数字で測られることが多いので、最初にこの合計特殊出生率について解説します。合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの女性の年齢別の出生率を合計したものです。
1年あたりの出生率を、15歳から49歳までの出産可能年齢で合計するわけですから、1人の女性が一生の間に産む子供の数の平均値であると言うことができます。男性が子供を産めないことに注意すると、合計特殊出生率が約2を下回ると、人口が減ってしまうことがわかるでしょう。乳幼児死亡率を考慮すると、2.07という合計特殊出生率が、人口が減らないための最低値であると言われています。