たくさんのレストランがある大都市では「所得の価値」が高い
さきほど、経済成長がもたらす、消費できる財の種類の増加が子供の数を減らすことを示しました。この効果は、大都市でこそ強く働きます。大都市には多くの企業が集積し、たくさんの種類の消費財が売られています。
東京にはたくさんのレストランがあり、地方都市ではあまり見かけないような国の料理を提供するレストランもあります。また、圧倒的に多くのアパレルブランドが店舗を構え、さまざまな種類の洋服を買うことも可能です。
こういった多種多様な消費財は、大都市で暮らす際の所得の価値を上げます。大都市では多くの種類の財があるので、同じ所得でも得られる満足感が高いのです。すると、大都市に住む労働者は子供の人数を減らして、会社での労働供給の時間を増やすことになります。
すなわち、たくさんの種類の消費財を消費することが可能な大都市では、農村や地方都市と比べると、子育てにかける時間を減らすために子供の数を減らす傾向が強くなることがわかります。
都市に人が集中するほど、子供の数は減っていく
さらに、この傾向は財が地域間を移動する際の輸送費用や、人々が地域間を移動する際の移動費用が減ったりすると、強められます。
財の輸送費用や人の移動費用が減ると、多くの企業が一つの地域に集積する傾向が強まります。輸送費用と移動費用が減れば減るほど、多くの企業が一つの地域に集まります。多くの企業が集まる地域では、それら企業が生産する多種多様な消費財の消費が可能になります。すなわち、その地域の生活水準が上がるのです。
このような地域へはますます多くの消費者=労働者が集まってくることでしょう。多くの企業が集まる地域では集積の経済によって高い賃金を稼ぐことができますし、何よりも多種多様な財の消費を楽しむことができます。
こういったメカニズムにより、輸送費用と移動費用の低下は、企業と人々の東京一極集中を進め、その過程で少子化が進んでいくのです。