女性が結婚を遅らせて、所得を増やそうとする理由
結婚によって仕事をできる時間が減るような(たとえば家事労働時間が増える)場合を考えてみましょう。
日本の場合は、特に女性は結婚によって家事負担の時間が増加すると考えられます。家事労働時間には賃金が発生しません。そして、家事労働時間が増えるにしたがって、賃金を稼げる会社等での労働時間が減ります。すなわち、家事労働時間が増えるにしたがって稼げる所得は減るのです。
結婚で手に入るもの(たとえば自分の好きな人と一緒に過ごせる時間が増える)の価値は経済成長によって変化することがなく、消費活動の楽しみは、消費できる財の種類が増えることを通じて高まります。すると、(特に女性は)結婚を減らして(結婚するタイミングを遅らせて)労働時間を長くし、消費活動を楽しむための所得を増やそうとするでしょう。
日本では、多くの子供は、結婚した夫婦の間に生まれるので、結婚が減ると、子供の数も減ることが予想されます。経済成長の結果、結婚を減らして消費活動を楽しむ所得を増やし、結果として子供の数が減る可能性もあるのです。
ほぼすべての先進国で少子化が進んでいる原因
産業革命から始まる経済成長を経験したほぼ全ての先進国において、出生率が低下しています。本稿の最初で紹介したように、日本では人口の多い都市部になればなるほど出生率が低くなる傾向にありますが、このような傾向は、世界各国で共通して観察されます。
都市部の出生率が低いことは、東京一極集中の加速とともに、少子化も加速することを意味しています。したがって、都市部で出生率が低くなる要因を理解することは、日本の少子化の要因の一つを理解することにつながります。ここからは、経済活動が集中する都市部で出生率が低くなる原因を考えてみましょう。
都市には多くの企業があつまり、たくさんの人々が住んでいます。その結果、都市の生活費はさまざまな意味で高くなっています。たとえば、東京のような大都市では家賃が大変高くなっています。一般に、供給に対して需要が多ければ、その財の価格は上がります。オークションサイトを利用したことがある人ならわかるように、ある物の値段は、買いたいと思う人の人数が多いと上がるのです。