優秀な部下の退職を防ぐための2つの姿勢

お伝えしたいのは次の2点です。

●生活と折り合いをつけながら仕事をしているメンバーの状況に配慮する
●メンバーが仕事以外の場で、知見を拡げ、深めることを奨励する。

1つ目は、メンバーの状況への配慮です。メンバーが自宅で働いている様子を思い浮かべて、配慮することが大事です。

(例)
「△△さんのおうちには赤ちゃんがいる。電話をかけるとお昼寝した赤ちゃんが起きてしまうかもしれないので、電話をしていいかをチャットで確認しよう」

ここ数年、働き方改革の一環で、時間外労働の削減で捻出した時間を、学びの充実に充てよう、趣味の時間に充てようといった取り組みをする企業が出てきました。こうした、仕事以外の顔を充実させよう(個人内多様性とも言います)という動きは、学びのオンライン化や副業解禁と相まって、さらに加速するでしょう。

リモートワークが進展させたオンラインの機会創出によって、あなたのメンバーも社外の人とつながりやすくなりました。そして、メンバーの社外流出が起きやすい状況に直面しています。すべての社外流出をなくすことはできませんが、今後もっと自社で活躍してほしい人に留まってもらう方法が考えられます。それが、メンバーの様々なチャレンジを応援することです。今の会社にいながら、副業、ボランティア、学び、趣味、地域活動などの顔を充実させることを推奨するのです。メンバーにとっても、会社に所属しているというある種のセーフティネットを持ちながら、様々なことに挑戦できる環境はプラスになるでしょう。

「花びらモデル」で考えるマネジャー自身のライフ

もうひとつのポイントが、マネジャー自身のライフを大事にすることです。図表2「花びらモデル」は、労働時間を短縮した先に、どのような時間を豊かにしたいのかを考えるときに利用できるワークシートです。

武藤久美子『リモートマネジメントの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)

仕事以外の顔(花びら)を持つ方はたくさんいると思います。それらの顔を大事にして、メンバーにも示してください。マネジメント業務の余った時間で仕事以外の顔を充実させるのではなく、先にそうした時間を確保しても良いと思います。20代のメンバーと40~50代のマネジャーへの調査結果によると、「仕事人間」「会社人間」な上司よりも、社外活動が充実しているほうが人間的に魅力があると思うと回答した割合は、20代メンバーの方が高く、マネジャー自身が思うより、若いメンバーから魅力的に映っているのです(リクルートマネジメントソリューションズ「ボス充実態調査」2017年)。

「これからのマネジャーは、マネジメントもしっかりやりつつ、ライフも充実していないと認められないのか……」と負担に思うのではなく、「自分が、社外活動も含めて楽しみ、心身の健やかさを保ちながら組織での役割を果たすことは、会社やメンバーのためにもなる」と思っていただけたら幸いです。

関連記事
頭のいい人はそう答えない…「頭の悪い人」が会話の最初の5秒によく使う話し方
「お疲れさまです」より効果的…気遣いのできる人は使っているメールの書き出しフレーズ
「このまま平凡な会社員で終わるのか」そんな悩みをもつ人に勧めたい"バットマン生活"の愉しさ
「やられても、やりかえすな」リアル半沢直樹で退社した会社員を待ち受ける残念な結末
「成果主義ではみんなやる気を失ってしまう」稲盛和夫がそう考えるようになった納得の理由