「1日2回のパトロール」が小さな火種を消す

もう1つ、私のイチオシのマネジメント手法があります。それは「パトロール」です。

パトロールとは、プロジェクトルームやオフィス内を歩き回ることです。特にこれといった用事がなくても歩きます。少なくとも1日2回、午前、午後のタイミングで、オフィスを歩き回るのです。

パトロールの目的は3つあります。1つは、悪い報告を受けやすくして小さな火種を消すためです。悪い報告は誰もが気が進まないものなので、報告しなければいけないような大きな問題は報告するようになっても、小さな問題まできっちり報告が上がってくることはあまりありません。

写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです

話しかけるハードルを低くする

ですが、リーダーが歩いていると、メンバーはその時にちょっと手こずっていることや課題、相談ごとを持って話しかけてきます。

木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)

例えば、「Aさんが体調不良で3日休んでいて、タスクが遅延して、他にも影響が出そうです」といったことです。「じゃあ、タスクの優先度を組み替えようか」とその場ですぐに対処できます。

自分がメンバーだった時を思い出してみてください。メンバーからすると、リーダーのところにわざわざ相談に行くのは時間的・心理的にハードルが高いものです。

ですが、リーダーがそこらへんを歩いている時であれば、そのハードルが下がり、いつもよりも気楽に話しかけることができます。

コミュニケーションが増え、サボりが減る

パトロールの2つ目の目的は、コミュニケーションです。歩いているついでに仕事の話でなく雑談をしたりすることもあるので、コミュニケーションが活発化します。ストレスを感じているメンバーがいれば、話を聞いてガス抜きをしたりもします。

当然、コミュニケーションが良くなれば、悪い報告も上がってきやすくなります。

そして、3つ目の目的は現場に緊張感を持たせることです。リーダーが歩いてくると、自分たちが見られているという緊張感を持ち、サボれなくなります。

実際に、人によっては視線が合わないように目をそむけたりしますし、サボっているのを見られて気まずい気持ちになったりすることもあります。「誰にも見られていない」という環境でいつでもピリッと働ける人はなかなかいません。

5分あれば、部内をこまめに歩いてみよう

パトロールはただ歩くだけ、といってもポイントがあります。まず、メンバーから目立つところを歩きます。気づいてもらえないとパトロールの意味がありません。主要な動線を歩いたり、あえてオフィスの隅のほうまで歩いていったりします。

そして、メンバーに目線を配りながら歩きます。緊張感を持たせる意味もありますし、目が合うことで向こうから話しかけやすくなる効果もあります。また、メンバーの心理的・肉体的な様子(疲れすぎていないかなど)を観察できます。

少なくとも1日2回はパトロールしましょう。私は、担当しているプロジェクトチームが大きい時は5分でも空き時間ができたらこまめに歩くようにしていました。簡単なことですが効果は大きいので、ぜひやってみてください。

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