多くの企業では若手が定着しないという悩みを抱えている。メンタルヘルスの専門家である見波利幸さんは「人材を育成する立場にある管理職側に問題があります。『休みたい』『辞めたい』と言われて初めて『相談してくれればよかったのに』『なぜ今まで言ってくれなかったの』と驚くような上司は、自分の怠慢を告白しているようなもの」という――。
リモートワークで20代の幸福度が低下するワケ
2021年5月にパーソル総合研究所が発表した「はたらく人の幸せに関する調査」によると、リモートワークで20代の幸福度が顕著に下がっているというデータが示されています。
経験を積んだ30代以上ではリモートワークで幸福感が増したという人が多いのに対して、20代だけが真逆の結果になっているのはなぜか。このデータは、マネジメント層が心に留めるべき「リモートワークの特性」が示されたものであろう、と考えます。
過干渉な上司より放任上司のほうが問題が大きい
リモートワークでは、通常のマネジメントスタイルが強調される傾向があります。普段からきめ細かいフォロー、サポートをするマネジャーはともすると「過干渉」に、部下の自律・自走を重んじるマネジャーは、一歩間違うと「丸投げ」「放任」になるのです。上司の思いと部下の受け取り方にすれ違いが生じやすいのは、コミュニケーションの時間が短いリモートワークのデメリットのひとつでしょう。
特に若い世代へのマネジメントで注意すべきは、過干渉よりも「放任」です。
日本では「困難に直面してこそ成長する」「仕事のノウハウは、上司や先輩の背中を見て盗むもの」といった考え方がまだまだ根強いようです。経済が右肩上がりで成長してきた時代は、こうした“昭和型”のマネジメントでも部下は成功体験を積むことができたでしょう。しかし、時代は大きく変わっています。今の社会に求められているのは、最速・最短で効率よく人材を育成することのはず。
経験やスキルに見合わない仕事を急に任されて、不安に押しつぶされそうになっている若手社員の声を耳にするたび、「若手を責めるよりもまずは管理職改革を!」という思いを強くします。