「TPPに呑みこまれる」議論は、不毛だ

写真=ロイター/AFLO

グローバリゼーションに関連した話題といえば、日本でもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加が大きな議論になりました。「TPPに乗り遅れるのではないか」「TPPに呑み込まれるのではないか」という“恐れ”が、議論の中心となって、賛成派と反対派が激しく対立する構図になりました。

これもきちんとデータを取って、冷静に分析すれば、単なる“恐怖”からではなく、議論がより建設的で違った方向になったのではないかと思います。

例を申し上げましょう。TPP問題は、2011年11月にハワイのホノルルで開催されたAPECでも議題に上っていて、私もある国際会議で発言しました。

その会議の議題は、アメリカの対中貿易赤字についてでした。ここで私は、「アメリカの個人消費の総額で、中国製品に対する購買が占める割合がどれくらいか、予測してみてください」と聴衆に問いかけてみました。そしてそれが、わずか「1~2%」だと回答すると、会場が「ええっ」という驚きに変わったのです。

日本の事例に話を戻しましょう。

国際的な貿易が、どれくらいの頻度で行われているのかを表す数値があるのですが、日本は、最下位国の2、3%以内に属します。つまり日本において、国際的な貿易は頻繁に行われていないのです。ですから「TPPに参加すると日本は呑み込まれてしまう」という議論は全く不毛で、その議論がなされている時点で、私としては、非常に残念なのです。

私としては、TPPへの参加に賛成の立場ですが、たとえ日本がTPPに参加しなくても、グローバリズムの波に乗り遅れることにはならないと思っています。

そもそもTPPに乗り遅れるという話は、ゼロサム(0または100)の発想で、議論としては不十分です。世界中が競争状態に突入して、優れているのは一国だけで、残りの国はすべて遅れているという議論ほど、不毛なものはありません。

TPPへの参加こそ、「日本の輝かしい未来のための第一歩」という見方をしてほしいし、「参加したらいろいろな国に叩かれてイジめられる」というネガティブな考えは、持たなくていいと思います。

(小川 剛=構成 市来朋久=撮影 写真=ロイター/AFLO)
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