第二次世界大戦後、哲学者のハイデガーが「テレビの出現で、人々に等しく近く情報が伝えられると感じられるかもしれないが、実は情報は人々から遠ざかっている」と言っています。80年代には、ハーバードビジネススクール名誉教授のテッド・レヴィットが、「市場のグローバル化はすぐそこまできている」とフラットな世界市場の到来を予言しました。

さらに大前研一氏が「ボーダレス・ワールド(国境なき世界)」を唱え、英エコノミスト誌のフランシス・ケアンクロスはコミュニケーション技術の進歩が「国境なき世界」をもたらすと指摘しました。

系譜的に言えば、フリードマンの「フラット化する世界」が登場するのは、この後、21世紀に入ってからです。

このようにテクノロジーは、時を経て進化してきていますが、「テクノロジーがもたらすものは何か」という議論は、今も昔もそれほど変わっていません。すなわち「世界のフラット化」です。

近年、“グローバリゼーションによって古い世界は押し流され、新しく理想的な世界が出現する”という、「グローバリゼーション津波論」が勢いを増しています。それに伴い、市場の国際統合を想定したグローバル戦略が、当たり前のように語られています。

しかし、誰もが「グローバル化」について、同じようなことを主張している割に証拠が乏しく、確かなデータに基づいていないのでは? という疑問を感じたのです。それならば、根拠となるデータを集めて、検証してみようと考えたのです。